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【新書/書評】近田春夫「筒美京平 大ヒットメーカーの秘密」ー近田春夫だけにしか語れない、聞けない筒美京平がいっぱい!

 

 生前の筒美さんと大変親しく、ディープな歌謡曲ファンである近田春夫著、というだけですでに期待度マックス!読めばもちろん期待以上の一冊だった。

 

 

 

 1部は近田さんへのインタビューでこれが全体の半分を占めている。筒美さんの楽曲について余すことなく語られているが、これはもう近田春夫による歌謡曲論であり、筒美京平論でもある。この1部だけでお腹いっぱいになっちゃう内容の濃さ。語り出すとキリがないので詳細はぜひ読んでもらいたいけれど、筒美さんを「含羞の人」というくだりが忘れられない。

 

「東京人ならではの含羞。さらに言えば、本来の自分が好きな音楽と自分の作ってる音楽が異なる、そのことに対する含羞もあったんじゃないか」

 

という話にううむと唸る。なんだかとても納得のいく言葉。さらに、

 

「京平さんは、日本語の官能性を、音楽の持っているフィジカルな快楽と合体させた」

 この指摘もすごい。他にも阿久悠・都倉俊一の男性性に対する筒美と作詞家の女性性の話、洋楽の引用など何かにインスパイアされるところから始まる曲作り、アレンジャーの差配の話などなどおもしろすぎて頭おかしくなっちゃう。

 

 さらに2部では、近田さん自身が実弟の音楽プロデューサー渡辺忠孝さん、作詞家橋本淳さん、歌手平山みきをインタビューしている。渡辺さんの子供の頃から青春時代の筒美京平に興奮し、500曲以上を作詞した橋本さんの作曲家・筒美京平の真実に驚愕し、平山みきのデビュー秘話にため息をつく。とにかく、知らないことがありすぎるのだ。渡辺、橋本、近田の筒美ベストソングの紹介もあって大興奮。偉大なるヒットメーカーの知られざる素顔と裏話満載のすごい1冊。文春新書からっていうのもなんだかいいな。

◆DATA  近田春夫「筒美京平 大ヒットメーカーの秘密」(文春新書)850円(税別)
 
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
 

2021.9.15 愛犬ひなた15歳の誕生日。今日も変わらず井の頭公園まで散歩に。読書はアイリーン・M・ペパーバーグ「アレックスとわたし」。