また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【絵本/感想】ペーター・ヴァン・デン・エンデ「旅する小舟」ー紙で折られた小さな舟が旅に出る。波乱万丈のその旅が最後にたどりつくのは?

 

 いやいやいやいや、この絵本にはぶっ飛んだ。2020年のNYタイムズ、WSジャーナルのベストブック選出作品。一切文字がない絵本だ。文字はないけど、エンデの絵が恐ろしいぐらいにイメージ豊かで様々なことを見るものに語りかけてくる。

 冒頭、2人の奇妙な男たちが1枚の紙から小さな舟を折り上げる。船上から海に放たれたその小舟の旅がこの物語のすべてだ。スタートからゴールまでの小舟の旅、構成的にはシンプルなのだけど、旅自体は波乱万丈!海亀や鳥に突かれながら、タツノオトシゴのような奴を乗っけながら、南の海から南極、氷山のトンネルをくぐり、地底まで沈み、ライフルで穴を空けられ、なんだか分からない人や生き物と出会い、そしてさらに…。すごいのはやっぱりエンデの絵で、1ページあるいは見開きいっぱいに描かれた海の中や海上の風景はとてつもなく細やかで、見る者の感情を激しく揺さぶる。あまりにすごすぎて同じページを何度も何度も見てしまう。見るたびに思いがけない発見がありウウムと唸る。いやぁすごい。

 

 舟は最終的に定められていたのであろう最後の場所に到着する。しかし、このラストはいったいどういうことなのか?小舟の旅には脆弱なものの勇気ある冒険というイメージはあるのだけど、それだけではないような。とにかく一度読んでみることをおすすめしたい。この絵本にはなんだか分からないけれど特別なものを感じる。

◆DATA  ペーター・ヴァン・デン・エンデ「旅する小舟」(求龍堂)2800円(税別)

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

 

2022.6.10 昨日は白内障の手術を受けるための検査に。ゴッドハンドといわれる先生の人気は凄まじかった。読書は朝井まかて「ボタニカ」。 

 

 

 

 

【書評ランキングに参加中】押していただけるとうれしいです。