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【書評】宮部みゆき「子宝船 きたきた捕物帖(二)」ー宮部みゆきが初めて「捕物帖」と名付けたシリーズの2冊目。生き生きと描かれる登場人物がなんとも魅力的だ!


 宮部さんが長い作家生活の中で初めて「捕物帖」と名付けたシリーズの第2弾。前にも書いたと思うが宮部みゆきは各巻のつなぎがいつもすごく上手い。1巻と2巻の間は約2年。僕のようなボンクラは登場人物のことをすぐに忘れちゃう。その辺りのことを意識してか、ほらほらこういう人だよ、居たでしょ?的な感じでさりげなく登場人物を紹介していく。その手際の良さ!読んでるこちらも「あぁ、そうだそうだ」と思い出していく。この感じがいいんだなぁ。

 舞台は江戸深川。3つの話に分かれているが事件は2つ。「持てば子宝に恵まれる」という宝船の絵。しかし、赤子を亡くした家の絵からなぜか弁財天が消えたというウワワが流れて…。もう1つは主人公の北一もよく知る弁当屋一家の毒殺事件。軽重はあるがどちらも人間の業に迫って強く心に迫る。

 

 このシリーズのおもしろさは事件解決のプロセスはもちろんのことだが、主人公を支える登場人物のキャラの多彩さにもある。先の親分が亡くなり文庫(読本などを入れる箱)売りをしながら岡っ引き修業に励む主人公の北一。その後ろ盾になる盲目のおかみさん松葉、風呂屋の釜焚きで事件解決の相棒にもなる喜多次(北一と2人で「きたきた」)。宮部さんの「ぼんくら」にも登場した大親分の政五郎や驚異の記憶力を持つ「おでこ」。欅屋敷の若君「栄花」や用心の青海新兵衛などなど。生き生きと描かれるバラエティ豊かな人々がこの物語の大きな魅力だ。

 

 そういう意味ではこのシリーズ、人情物語ともいえるのかもしれない。北一の成長物語、友情物語としても楽しめる「きたきた捕物帖」はまだ始まったばかり。今後の展開がすごく楽しみだ。

◆DATA   宮部みゆき「子宝船 きたきた捕物帖(二)」(PHP研究所)1600円(税別)

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)


◯「きたきた捕物帖」1巻目の書評はこちら!

 

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