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【書評】宮部みゆき「よって件のごとし」ー神田・三島屋の風変わりな百物語もシリーズ8巻目。全3話と少ないがどの話も内容が濃く、すこぶるおもしろい!

 

 「三島屋変調百物語八之続」とサブにあるようにこのシリーズも8巻目。江戸・神田の袋物屋・三島屋で行われているちょっと変わった百物語、聞き手が三島屋次男の富次郎に変わって3巻目になる。全3話と収録された話は今までの中でも少ないがどの話も内容が濃い。そして、どれも怪奇的な要素はもちろんのことSF的な要素が含まれているのが興味深い。

 全国の神々がやって来る賭場が舞台になる最初の「賽子と虻」はまるでジブリワールドのようだ。ハッピーエンドとは言い難いがこの神々の賭場の描写が印象的。「土鍋女房」は川の渡しの船頭をやっていた兄の「女房」のことを妹が語るのだが、結末を含めてこの話はイメージ的に恐ろしい。ううむ、怖いな、怖いぞ。

 

 3話の中ではやはり表題作「よって件のごとし」が一番おもしろいし読ませる。池のこちら側に向こう側の村から一人の娘が潜って泳いでやって来る。花江と名乗るその娘が語る向こう側の村・羽入田村にあらわれた〈ひとでなし〉という化け物のこと。こちらの村・中ノ村の男たちは娘の村を救うために羽入田村に向かい、〈ひとでなし〉と戦うことになるのだが…。その戦いの描写が宮部みゆきらしく凄まじい。そして、その後の展開も。この話、2つの村がパラレルワールド的になってる設定にも驚く。読ませるなぁ、宮部みゆき。時折語られる三島屋界隈の話、初代の聞き手・おちかのおめでたや長男・伊一郎の縁談、復帰の話などが人情話的なおもしろさがあって楽しい。
◆DATA 宮部みゆき「よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続」(角川書店)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)

 

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