この2人には講談社出版文化賞絵本賞などを受賞した「くまとやまねこ」という傑作絵本がある。酒井さんはいろいろなタッチで絵を描くのだけどこの本は「くまとやまねこ」に近いタッチで描かれていて内容ともよく合っている。
夕方、橋の上で川を眺めている男の子の物語。どうやら彼は学校などでいろいろ合ってこの川に飛び込んだら、と思っているようだ。そこにやって来たのが雪柄セーターのおじさん。どうやらホームレスのようだ。彼は男の子にいろいろと話しかける。
みずうみを見たことある?ただのみずうみじゃない。その水は暗い地底の水路をとおってきみのもとへとやってくる。
水路の暗がりの向こうには、たったひとつの、きみだけのみずうみがある。
みずうみの話がしばらく続く。そこで描かれる酒井さんの絵が素晴らしい。ゾクゾクとしてくるような迫力!
こうやって、耳をぎゅうっとふさいでごらん。遠くからやってくる水の音が、きこえるよ。
おじさんは行ってしまい、残された男の子も家に帰る。その後の展開はぜひ読んで欲しいのだけど、男の子は成長してからもときどき耳をふさいで地底の水の音を聞くことがあるのだ。おじさんが言っていたみずうみって一体何だろう?それぞれの解釈があると思うのだけど、不思議なおじさんとの出会いとみずうみの話が一人の男の子の命を救ったことは確かだ。そして、これを読んだ誰かの命をも。
◆DATA 湯本 香樹実/酒井 駒子「橋の上で」(河出書房新社)