ここにはまさに江戸の市井の人々の暮らしがある。非常にシンプルなタッチで描かれた漫画だけれど、それがまさに江戸を感じさせてたまらない。ウルバノヴィチ香苗、すごいぞ。それにこのタイトル、いいじゃないか!
描かれているのは江戸の人々の生活そのもの。煮売り屋、飛脚、火消し、髪結いなどの仕事だったり、油売り、ところてんや、豆腐売りなどの物売り。田楽鍋、夜鳴きそばなどの屋台、さらにお月見、煤払い、梅見、潮干狩りなどなどの年中行事。それらを通して江戸という町の季節感とそこで生きる人々の日常が見事に浮かび上がってくる。各話8ページで上下で全30話。時々出現する1ページ丸ごと使った1枚の絵はまさに江戸の情緒を感じる贅沢さ。テイストは違うが現代の浮世絵の趣きだ。いいなぁ
僕らは今、何だかやたらと慌ただしいデジタルなワールドで暮らしていて、特に昨今はどうしようもないぐらい生きづらさを感じている人も多い。そんな令和の時代からウルバノヴィチ香苗さんが描く江戸を見ると、なんて豊かで贅沢なんだろうと思う。ここでは本当に豊かな時が流れていてみんな生きることをちゃんと生きている。上下2巻で終わっちゃったのは何だかすごく残念。ぜひまた何か江戸ものを描いて!!
◆DATA ウルバノヴィチ香苗「まめで四角でやわらかで 上・下」(リイド社)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)