また、本の話をしてる

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【追悼】詩人の谷川俊太郎さんが亡くなる。自分の中にある様々なフレーズ、それがずっと残り続けること。そして、死をきっかけに出会う人がいること。これは本当にうれしいことだなぁ。

よげん   

         谷川俊太郎

 

きはきられるだろう

くさはかられるだろう

むしはおわれ

けものはほふられ

うみはうめたてられ

まちはあてどなくひろがり

こどもらはてなずけられるだろう

 

そらはけがされるだろう

つちはけずられるだろう

やまはくずれ

かわはかくされ

みちはからみあい

ひはいよいよもえさかり

とりははねをむしられるだろう

 

そしてなおひとはいきるだろう

かたりつづけることばにまどわされ

いろあざやかなまぼろしにめをくらまされ

たがいにくちまねをしながら

あいをささやくだろう

はだかのからだで

はだかのこころをかくしながら

詩集「夜のミッキー・マウス」より

 

 谷川俊太郎さんが今月13日に亡くなられました。「生きる」「朝のリレー」「死んだ男が残したものは」などなど有名な詩はたくさんあるし、僕なんかは「かっぱかっぱらった かっぱらっぱかっぱらった とってちってた」なんてフレーズがある「ことばあそびうた」という詩集が大好きだし、なんだかわけわからないけどなんでも定義しちゃう「定義」という小難しい詩もおもしろかったし、なんといっても「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」というタイトルに脳天かち割られたようなショックを受けたこともあった。上の「夜のミッキー・マウス」という詩集も好きで「よげん」という詩をちょっと写してみた。そうそう「生きる」は詩を知る前に小室等の歌で知ったのだった。谷川さんが全曲の詩を書き、小室さんが曲を書き、鈴木慶一のムーンライダーズや矢野顕子が参加した「いま生きているということ」というCD。この歌も好きだったな。


お早うの朝

        谷川俊太郎

 

ゆうべ見た夢の中で

ぼくは空を飛んでいた

小川の上を落っこちまいと

あひるみたいにはばたいた

 

夜の心のくらやみから

夢はわいてくる

誰もそれをとめられない

そしてお早うの朝はくる

(後略)

 後半の四行、いいなぁ。で、これから谷川さんの詩集を読みたいのなら選集がいろいろ出てるからそれを読めばいいんじゃないかなぁ。ぼくもそういうのから入ったもの。あと、来週には「ベージュ」という詩集が新潮文庫で文庫化されるので、それを見てみるのもいいかもしれない。これは2020年に刊行されたもので、88歳までの未収録詩の中から谷川さんが自選し、書き下ろしを加えたものだ。