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【書評】高瀬隼子「新しい恋愛」ー恋愛感情へのディープなアプローチがとんでもない。高瀬隼子はやっぱりおもしろいぞ!


 高瀬隼子の小説といえば芥川賞受賞の「おいしいごはんが食べられますように」のように人間の心の中に棲む悪意や冷徹さを浮き彫りにして読む者の共感を誘う物語が多いが、これはもう少し微妙な恋愛中の女性の感情を描いていて驚かされる。

 5つの物語を収録した短編集。表題作がおもしろいのは主人公が付き合っている男から、プロポーズされたくない、と思ってること。彼女はロマンチックなことが超苦手なのだ。もしプロポーズされたら、それこそ「一生なにがあっても守ってみせる」とか「世界を敵にまわしても君の味方でいる」なんてことを彼は言い出しかねない。それがたまらなく嫌なのだ。いやこれ、共感する人も多いのではないか。マッチング恋愛が廃れた未来の話というのもおもしろい。しかも、この話だけでは終わらず、姉の夫の「ロマンチックな恋」へと展開させる最後の着地がトンデモない。

 個人的にはストーカーのように主人公を思い続ける男性とそれをよりどころにし、彼のしつこく燃え続ける恋の炎を絶対に手放したくないと思う主人公との関係を描いた「あしたの待ち合わせ」が好き。会社の50歳の上司が24歳の女性と結婚することになった時の社内の反応と主人公の迷いとためらいを描いた「いくつも数える」も印象に残る。いつもの高瀬隼子も十分におもしろいが、この短編集は恋愛とそこで起きる感情へのディープなアプローチが際立っている。高瀬隼子からはまだまだ目を離せない。
◆DATA  高瀬隼子「新しい恋愛」(講談社)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)