今年の本屋大賞受賞作!タイトルがどういう意味か気になるが、これはポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」のこと。物語では中心人物の一人・小野寺せつなが勤めている家事代行サービスの会社名になっている。
冒頭、主人公の野宮薫子がせつなと待ち合わせをする。せつなは急死した最愛の弟の元恋人。公務員で41歳の薫子とひとまわり下でデニムのつなぎにごついコンバットブーツ、まるで戦闘機の整備士みたいなせつな。そんな2人が話すのは弟・春彦の相続のこと。受け取れ!いらない!のやり取りが続く。せつなの勝手な言い草に怒り狂う薫子。一体これはどういう話なんだろう?最初から少し戸惑ってしまった。
ここから始まる2人の不思議な関係。薫子はなぜか「カフネ」のボランティアサービスを手伝うことになり、せつなとコンビを組む。春彦もこのボランティアをやっていたらしい。そこで彼女たちが訪れる人々。母と娘の2人暮らしだったり、母親の介護をしてる女性だったり。家事代行で家を整理してもらい、美味しい食事を作ってもらうことで、彼女たちの暮らしが整っていくところがこの物語の一つの読みどころだ。せつなの作る料理の美味しそうなこと!!
お互い相容れない2人ではあるけれど、その関係が少しずつゆっくりとほどけていくように変わっていくところがいい。薫子にもせつなにも親との間に難しい関係がある。29歳で死んだ春彦の死の真相、友人・港くんとのこと、春彦が隠していたある障害のことなど、そういう諸々が彼女たちの間に横たわり、2人の関係を変えていく。様々な問題を抱え生きがたい人々が料理やその行動を通して通じあっていく、そんな物語。タイトルにつながるラストがとてもいい。
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◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)