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【エッセイ】村上春樹「ラオスにいったい何があるというんですか?」-村上春樹にしては少し物足りない紀行文集

 20年ほどの間にいくつかの雑誌のために書いたものをまとめた村上春樹の紀行文集。出てすぐ買ったが小説最優先なので手に取るのが遅くなってしまった。ここにはボストン2編、アイスランド、オレゴン州とメイン州のポートランド、ギリシャのミコノス島とスペッツェス島、ニューヨークのジャズ・クラブ、フィンランド、ラオス、イタリアのトスカナ、熊本県という全10編が収録されている。以前暮らしていた土地、初めての土地、それほど行きたくなかった場所などなど村上さんの気分にも温度差がある。

 

 一番面白かったのはアイスランドかな。英語が通じる国だけど日本でいうと「源氏物語」の時代と同じ言葉がそのまま現役のアイスランド語として使われていることとか、パフィンという名物鳥の話とか、国中温泉だらけだとか。アイスランド、なんだか行ってみたい。

 

 でもなぁ、村上春樹の紀行エッセイはすこぶるおもしろいと皆に言って「遠い太鼓」とか「雨天炎天」とか「辺境・近境」とか名作を勧めてきた僕としては、これはなんだか物足りない。一つの要因として日航のファーストクラス向け機内誌に連載されたものがほとんど、ということもあるかもしれない。とっとことっとこと文章は進んであまり脱線もしないし、いつもの軽妙洒脱さ、愉快なレトリックやユーモアも不足している。スルスルと読みやすいけれど心に残らない感じ。写真も、ここ写真でみたいよなぁ、というところになくてガッカリ。というわけでちょっと期待はずれの一冊。

 

 

というわけで、こちら、おすすめ!

 

◯この本は2014年4月、文春文庫で文庫化されました。

 ◯村上春樹のその他の本の書評はこちら

  

 2016.6.9 昨夜、また少し胃の調子がおかしかった。朝には治る。それにしても舛添氏、いいかげんにしろよ。読書は北村薫「中野のお父さん」。

 

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