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【書評】リディア・デイヴィス「話の終わり」-この奇妙さ!このおもしろさ!う〜ん、スゴい

 「アメリカ文学の静かな巨人」ともいわれるリディア・デイヴィスの唯一の長編小説「話の終わり」。これは自分の元から去っていった年下の男とのことを「私」が回想する物語である。その回想がなんだかスゴい。めまいがしそうなぐらい精緻でこまかい。恋愛小説でのこういうこまかさというのはどちらかといえば苦手なので、これだけだったら途中で投げ出していたかもしれない。ところが、ところが、リディア・デイヴィス、う~む、である。

 

 この小説、地の小説の部分とは別に、それを書いている「私」が登場して、なんだかんだと話し出す。この小説のテーマは、とか、自分の書くことの何割かは事実と異なっている、とか、精緻な表現をさらに検証するような部分が時おり顔を出すのだ。といっても、その部分がこの小説の中で浮いてしまっているのか、といえばそうではない。そして、ちょっかい出しに出て来る「私」はイコールリディア・デイヴィスということでもない。つまり、小説の部分+それを書いている作家の部分、でこの恋愛小説はできあがっているのだ。

 

 この2つが絡み合いながら物語は終盤に差し掛かるのだが、彼と別れた「私」は、それでもこの年下の男のことが忘れられず、ストーカーじみた行動に出たり、妄想を繰り返したりする。それはおかしいぐらいだが、失恋や届かぬ恋というものにはここまで極端ではなくても、そういう要素はかなりあるので、終盤に来て「私」に対する共感はグッと強まってくる。なんだが、リディア・デイヴィスマジックにはまっちゃったのではないかな、私。この奇妙さ!このおもしろさ!う~ん、スゴい。

 

 

2011.1.24 さて、サッカーは明日韓国戦、楽しみだ。あ、明日は本屋大賞のノミネート発表もあるようです。お昼頃だって。読書は佐藤泰志「海炭市叙景」。

 

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