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【書評】宮部みゆき「泣き童子」-怪異や物の怪を描いても、そこには愚かさや弱さを含んだ人間たちがいる

泣き童子 三島屋変調百物語参之続 泣き童子 三島屋変調百物語参之続
宮部 みゆき

文藝春秋 2013-06-28
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 やっぱり宮部みゆきは巧いなぁ。「三島屋変調百物語」の3巻目にあたるこの「泣き童子(わらし)」では、特に構成の妙が光っている。全体は6つの物語に分かれているが、最初の「魂取の池」は導入的な軽い怪談話。この話の中で、作者は主人公が百物語の聞き手になったいきさつをサッと紹介し、おなじみの登場人物たちと読者を再会させる。その手際のいいこと。こういうこまやかな気配りが宮部みゆきなのだ。

 

 2つめの「くりから御殿」もわりあい軽め。そして、表題作の「泣き童子」、これと、ちょっと趣向を変えた「小雪舞う日の怪談語り」をはさんだ5作目の「まぐる笛」がこの小説のハイライトだ。

 

 不思議な力を持つ赤ん坊がもたらす災いとそれに翻弄され、自らを見失ってしまう人間を描いて見事な「泣き童子」。「まぐる笛」には、”まぐる”という、巨大な獣が登場する。数十年に一度、人里に現れる凶暴な生きものとその化け物から生き延びるため代々受け継がれてきた人間たちの知恵。実は2話目の「くりから御殿」には山津波が出てくる。大震災後に書かれたこの物語には、作者の強い思いを感じる。人間の意志ではどうにもならないもの…それに対して、私たちはどう立ち向かっていけばいいのか。

 

 いつも言うことだが、宮部みゆきの物語の中心は常に「人間」だ。怪異や物の怪を描いても、そこには愚かさや弱さを含んだ人間たちがいる。明日に向かって今日という日をなんとか生きている男や女がいる。この物語もまた、そんな人間を描いて見事な物語である。

 

◯この本は2016年6月、角川文庫で文庫化されました

 

 ◯宮部みゆきのその他の本のレビューや記事はこちら

 

  

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