奇妙な設定の中で鮮やかに浮かび上がるテーマ。
土曜日は山田太一ドラマスペシャル「遠まわりの雨」があった。僕自身、もちろん脚本家山田太一は好きだが、小説家山田太一とその作品はさらに好きだ。彼の小説ワールドはなんといっても設定が面白い。
処女長篇「飛ぶ夢をしばらく見ない」は出現するたびに若返っていく女の話だし、映画にもなった「異人たちとの夏」は幼い頃死別した父母(いわば異界の人)と主人公との再会の話。「君を見上げて」は大女と小男の恋物語、「丘の上の向日葵」は見知らぬ美女からわが子の存在を告げられる男の話だ。そんな奇妙な設定なので、僕らはグッと前のめりになって読む。だからこそ、作者からのパンチがガツンと効く!彼が伝えたいテーマは愛であり、性であり、家族である。セリフのうまさ、構成の巧みさは脚本同様。はまっちゃったらなかなか抜けられない、それが山田太一の小説ワールド。まだの人はぜひ!そろそろ新作も読みたいぞ。
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