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【書評】澤田瞳子「若冲」-虚実ないまぜの中で描かれる、異能の画家・若冲その人

 伊藤若冲について書かれた小説ってあるのだろうか?2000年の大回顧展以来ブレイクした若冲は僕も大好き。でも、彼の人生については雑誌の特集や展覧会のパンフでしか知らなかった。とういわけで、「若冲・伝」のような話を期待して読み始めたのだが…。

 

 8編の連作を通して描かれるのは40歳から84歳で死ぬまでの若冲。しかし、そこには、自死した妻のお三輪、その弟で若冲を憎み自らも画家となる弁蔵、腹違いの妹お志乃など作者が創りだした人物が物語のキーパーソンとして登場する。つまりこれは「若冲・伝」ではなく、異能の画家伊藤若冲を主人公にした「物語」なのだ。

 

 では、つまらないのか、と問われればそんなことはまったくない。あの「動植綵絵」をはじめとする彼の絵の創作秘話もあれば、池大雅、円山応挙、与謝蕪村等との交流、若冲が錦高倉四町の市場を守るために活躍したという話の実際もわかる。天明の大火の凄まじさも見事に活写されている。そして何より、全編を通して浮かび上がってくるのが、画家・伊藤若冲その人だ。彼の絵を見て誰もが感じるなぜここまで、という執念。奇妙さや不思議さ。澤田瞳子は、虚構と史実をないまぜにしながら画家・若冲と彼の絵に対する思いを見事に描き出している。そこに彼女の深い洞察力と確かな筆力を感じる。

 

伊藤若冲に少しでも興味がある人にはぜひ読んでもらいたい一冊だ。

 

○澤田瞳子「若冲」は2017年4月に文春文庫で文庫化されました。

2015.6.8 さてさてさてさて、女子サッカー、ワールドカップが始まった。明日はなでしこ登場、見るぞ。読書は川上弘美「水声」。

 

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