また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、出た本出る本など、本関連の最新ニュースを届けます。

【書評】浅生鴨「猫たちの色メガネ」-27の奇妙な味のショートストーリー、さてどれが好き??

 作者はNHKのツイッターアカウント@NHK_PRの中の人1号として有名になった浅生鴨さん。今は主に執筆活動に注力している、と紹介にある。「猫たちの色メガネ」はデビュー長編「アグニオン」に続く2冊目の小説で、27のショートストーリーを集めたもの。ショートショート的なちょっと奇妙な物語が集まっていておもしろいのだけれど、人によって好みが分かれそうだ。

 

 僕はこういう短編の場合、設定だけで笑わせたりするものより、風刺的であったり、諧謔的であったりする方が好きだ。「猫たちの色メガネ」は、どちらかというと前者の方が多いので、そういう意味では少々物足りない。設定で読ませる話って、作者のドヤ顔が見えていやなのだ。


 いや、それだったら風刺的な方こそそうなのでは、と思う人もいるでしょうが、ストンと巧いところに落ちた時の快感は、ドヤ顔を凌駕するような気がする。設定で読ませる話なら、最後の最後までグイグイと攻めたてて話が破錠しちゃうぐらいがいい。

 

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【文学賞】野間文芸賞は高村薫さん「土の記」、新人賞は今村夏子さんと高橋弘希さんに

 第70回の野間文芸賞が先週末発表になり、高村薫さんの「土の記」が受賞しました。パチパチパチ!第39回野間文芸新人賞は今村夏子さん「星の子」と高橋弘希さん「日曜日の人々(サンデー・ピープル)」に。第55回の野間児童文芸賞も同時に発表され、山本悦子さんの「神隠しの教室」が受賞しました。「土の記」、高村さん意欲的に新分野に挑戦していますね。「土の記」のテーマは自然と農業とか。上下2巻の長編です。

 

 文芸賞選考委員は奥泉光・佐伯一麦・多和田葉子・町田康・三浦雅士。新人賞選考委員は小川洋子、島田雅彦、高橋源一郎、長嶋有、保坂和志、星野智幸。群像編集部のツイッターで新人賞について星野智幸さんの講評の一部が紹介されています。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2017.11/3週)

 さてさて今週は1「本」勝負!出る本、今年の文藝賞を受賞した若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(11/17)出ます。河出書房主催の文藝賞は、綿矢りさなど若手の受賞が多い感じだったのですが、若竹さんは63歳の主婦で歴代最年長。もうこれだけで興味津々!タイトルにも心惹かれます。アマゾンの紹介を引用してみますね。

 

74歳、ひとり暮らしの桃子さん。
おらの今は、こわいものなし。

結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。
身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。
捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――

青春小説の対極、玄冬小説の誕生!
*玄冬小説とは……歳をとるのも悪くない、と思えるような小説のこと。
新たな老いの境地を描いた感動作。第54回文藝賞受賞作。
主婦から小説家へーー63歳、史上最年長受賞。

 

 青春小説の対極の玄冬小説、っていうのがいいですね。語りは東北弁、地の文は標準語にしてリズム感を生み出してるようです。選考委員他の評判もなんだかいいですよ。

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【映像化】谷崎潤一郎「細雪」をNHK・BSでドラマ化。来年1月から「平成細雪」

 この新潮文庫版は懐かしいなぁ。上中下3巻で今も発売されています。ドラマが始まる頃には帯付きで新しいのが出るのかな?このニュース、初めて見た時は平成の「細雪」と一部で紹介された綿矢りさの「手のひらの京」のドラマ化かな?と期待したのですが違いました。谷崎の名作を平成を舞台に「バブル崩壊後を生きる女性たちの物語 」としてよみがえさせるようです。放送は1月7日・日曜午後10時からBSプレミアムで。全4回です。

 

 四姉妹は長女・鶴子を中山美穂、次女・幸子を高岡早紀、三女・雪子を伊藤歩、四女・妙子を中村ゆりが演じます、脚本は岸田國士戯曲賞受賞の蓬莱竜太、演出は映画「東京タワー」などの源孝志。

 

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【書評】宮部みゆき「この世の春」-凍え死にそうな冬の季節を生き延びたひとつの魂の物語

 最初から緊張感のある場面が続き、読み進めていくうちに状況がわかってくる。そして、この物語の核となる部分が明らかになる。いやぁ、驚いた。江戸時代を舞台にこういうテーマで小説を書くのか?これを思いついた時、さすがに宮部さんも「おぉぉ」と思ったことだろう。しかし、アイデアを思いつくだけなら誰でもできる。大切なのはこのテーマをどのような物語に仕上げるか。そこで宮部みゆきが考えたのは。

 

 宝永七年(1710年)下野北見藩で起こった政変から物語は始まる。若き藩主であった六代目の北見重興が心の病のためにその座を奪われる。それも「押込(おしこめ)」という形で。押込とは家を守るために問題のある主君を強制的に監禁することだ。いったい重興に何が起こったのか?心の病とは何だ?

 

 そんな騒動に主人公の多紀も巻き込まれていく。彼女は訳あって前藩主が幽閉された「五香苑」で重興に仕えることになるのだ。多紀はここで身近に接することになった、重興の「今」を知り驚愕する。それは、共に仕えることになった元江戸家老の石野織部、医者の白田登も同じだ。これはいったい何なのか?重興はなぜこんなことになってしまったのか?何が原因で起こったことなのか?しだいしだいに物語は核心に迫っていく。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2017.11/2週)

 さて、出た本。角田光代が雑誌「オレンジページ」に長期連載しているエッセイの第三弾、「月夜の散歩」出ました。既刊の「よなかの散歩」「まひるの散歩」はすでに文庫化されています。角田エッセイの楽しさを知りたいならばこれはおすすめ!

 

 もう1冊というか上下2冊ですが、宮部みゆきの名作「蒲生邸殺人事件」が文春文庫から新装版で新しく発売になりました。日本SF大賞受賞作です。時間旅行者である主人公が今まさに2.26事件が起ころうとしている昭和11年の東京にタイムトリップするという物語。かなり前の作品なので書評を紹介できないのが残念ですが、個人的には宮部作品のトップ5に入る小説だと思っています。未読の人はこの機会にぜひ!!

 

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【絵本】くどうなおこ×松本大洋『「いる」じゃん』-言葉と絵、母と子のコラボ、生きる元気が湧いてくる!

 くどうなおこは詩人だ。81歳になる。そうか、童話作家でもあるのだな。そちらのことはあまり知らない。松本大洋は漫画家でイラストレーターだ。知ってる人も多いだろう。で、この2人、親子である。裏の方の帯にくどうさんの言葉が書かれている。

 

「うれしいなあ。松本大洋との合作って」

 

そうだよなぁ、しかも、こんなに素敵な一冊!帯、表は谷川俊太郎さんと糸井重里さんの言葉

 

スイートな言葉にホットな絵、こんな絵本初めて!ー谷川俊太郎

 

赤んぼうでも、おとなでも好きになる。

ささやくことばと、なでるような絵。ー糸井重里

 

 よさそう。でも、う〜ん、このタイトルには抵抗があった。じゃん、は好きじゃない。それを詩人のくどうさんが…。しかし、しかし、この言葉、絵本の最後の一行なのだけれど、この一行で物語が見事に着地するのだ。すごい。

 

 この絵本の文章はまさに詩だ。言葉だけ読んでも十分にいい。そして、生きる元気がムクムクムクと湧いてくる。あ〜だいじょうぶなんだ、と、あ〜みんなもなんとか生きてるんだ、と。そして、松本大洋の絵!谷川俊太郎との「かないくん」もとてもよかったけれど、これもまたいい。モノクロームに淡く着色された感じがなんとも素敵だ。くどうさんの詩を増幅させて、読む者の心を遥か彼方まで飛ばしてくれる。

 

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