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【エッセイ】酒井駒子「森のノート」-彼女の文章は簡潔でムダがなく静謐だ。森の中で紡がれた優しさがある

 まず、本の佇まいがいい。表紙の「絵」とデザインされた「タイトル」。これだけで何だかうれしくなってしまう。中身も細部までデザインがいきとどいていて、とても美しい。いいなぁ。

 

 絵本作家・酒井駒子さんの初めての画文集。酒井さんの絵は大好きだ。「エッセーのタイトル」と「絵」でひとつの見開き、エッセー本文も見開きで完結していて計4ページで1章。全36章の構成になっている。

 

 36プラスαの絵があるのでそれを見ているだけでもあきない。実は、絵とエッセイにはあまり関連がないのだが、意外とどこかでつながっているのかもしれない。酒井駒子の文章は簡潔でムダがなく静謐だ。森の中で紡がれた優しさがある。そして、時々、鋭さも感じる。鋭い刃をこの人は隠し持っている。

 

 最初の一編「子犬」、からまつの森を歩いて行くと、どこからか子犬が鳴くような「くぅーんくぅーん」という声が聞こえる。二匹いる感じがして、声のする方へと歩いていく。すると、なぜか森の中にマンホールがあって…という話。結末はヒミツだけどなんだかいい。

 

 36の話、どれも好きだけれど特に印象に残るものがある。ニワトリを抱きうっとりしている男に心惹かれる「男の人」、夏が来て躁状態になっている森を描いた「夏」、家の窓に激突して死んだ小鳥を埋める「シジュウカラ」、そして、空を飛ぶ飛行機を見て「ぬるんとした生き物みたいだった」と思う「軍用機」。

 

 山の家と東京を行き来している筆者の周りで起こる様々な出来事。自然やそこに生息する生き物たちに注がれる真摯なまなざしは、彼女の絵そのものだ。手元に置いて時々読み返したい、そんな一冊。

 

 2017.10.5 公示日まであと少しですが、まだまだいろいろありそうだなぁ。読書は宮部みゆき「この世の春 下」

 

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