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【書評】窪美澄「じっと手を見る」-弱き者へのまっすぐな眼差し!これこそ窪美澄の小説だと強く思う

 7つの物語からなる連作長編。最初の話から終わりまでの間に6〜7年の歳月が流れる。舞台は富士山が見える樹海のそばの地方都市。なんでも揃うショッピングモールと弛緩したようなフードコートのある町。主人公の1人日奈はそこで介護士をしている。同じ介護士の海斗と暮らしていた彼女は、自分の気持ちに気づき別れを切り出す。そこに現れるのが東京の編集プロダクションの男、宮澤だ。強く心惹かれる日奈。

 

 中心となるこの3人の男女、けっして愛される人間ではない。男たちは「やわらかく、ふるふるしたものが詰まっている」弱っちい人間だし、日奈も自分の都合だけで男とついたり離れたりしているように思える。日奈と宮沢は富士の見える場所を離れ、新しい町で暮らすようになるのだがそこもまた同じような地方都市、彼らの生活も歳月の中で倦んでゆく。

 

  介護士として日奈が接する老人たちやその家族との出会いが物語の大きなアクセントになっていて、彼女の日常とその心の闇を浮かび上がらせる。その時々の思いに流され生きている主人公たち、つながっていることで救われたい彼女に彼。大きな共感があり、同時に、反感がある。作者は決して主人公たちを見放すことなく、最後までしっかりと見つめ続けている。その眼差しのまっすぐさ!それこそがこの作者の小説の良さなのだと強く思う。

 

 

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