また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【絵本/感想】ヒグチユウコ「すきになったら」-「すき」のすべてがここにある、そして…

 いやいやいや、ヒグチユウコワールド、スゴいなぁ。とはいっても実はこれが初めて手に取った彼女の絵本。だからヒグチさんのことよく知りません。扉にあるプロフィールには「画家」って書いてありました。そうなのね。定期的に展覧会もやってるんだ。ネットで調べたら猫の絵がたくさん!最初の絵本も猫の話のようです。

 

 さてさて「すきになったら」。あぁ、これはもうタイトル通りの本です。誰かを好きになった、何かを好きになった、その時の気持ちのすべてがこの中にあります。思春期の皆さんは簡単にKOされちゃうでしょう。思春期じゃない皆さんも「すき」を知ってる人ならば、一網打尽に違いありません。しかし、彼女のとてもとても繊細な線で描かれたこの話は…う〜ん、どう表現したらいいのでしょうか…「それ以上のもの」。「すき」という感情を持つ人間という生き物にドドドドドドッと迫ってきます。ううむ、怖いわぁ。大変だわぁ。     

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2017.2/1-2週)

 さて、出た本。とんぼの本から「新生オルセー美術館」出ました。大改装して生まれ変わったオルセーのすべてが分かる鑑賞ガイド本。オルセー駅の駅舎を整備して作られたこの美術館、印象派の作品が多いので人気です。これは気になるなぁ。

 

 そして、もう一冊。去年の11月に出ていた「猫の国語辞典」、これちょっと欲しい。「俳句・短歌・川柳とともに味わう」という言葉がタイトルの前に付いています。収録されているのは猫の句2400と猫に関する言葉や言い回しなど。ううううむ、買う、か。

 

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【コミック】岡崎京子の名作コミック「リバーズ・エッジ」映画化決定!

 これは正式な情報はまだあがってないようなのですが、エキストラ募集の情報が出て、それがTwitterにも流れたようです。え〜っと、これです。

 


 「リバーズ・エッジ」は間違いなく岡崎京子の最高傑作で僕も大好きです。でも、実写化はどうなのかなぁ…。映画にするとペタンコになっちゃうような気がするなぁ。コミックでしかできない表現もあるのです。

 

 岡崎さんサイドも当然、慎重だったと思うけれどOKしたのはおそらく監督である行定さんの思いが強かったのでしょうね。ところで、若手実力ナンバー・ワン女優って誰でしょう?広瀬すず?のんさん?ううううむ、とにもかくにもビッグニュースではあります。

 

◯追記ー正式発表になりました。こちらを。

 

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【書評】原田マハ「本日は、お日柄もよく」-折々のスピーチが主人公の仕事を見事に浮き彫りに!

 昨年末買ったこの小説の文庫の帯には30万部突破と書いてあった。調べてみると、単行本は2010年8月の発売で1万部。2013年に文庫化されて初版は1万5千部。大化けしたのはある書店員の1枚の手書きパネル が注目されてかららしい。「何度も泣きました」というそのパネルは帯にも採用され、読者を増やしていったようだ。タイトルと水引の表紙で、結婚の話だと勘違いして買った人もいたかもしれないが、それにしてもこの数字はすごい!  

 

 「本日は、お日柄もよく」はスピーチライターの話だ。日本では未だなじみがない仕事だが、結婚式の祝辞、社長のスピーチ、国会での代表質問、選挙演説などなどスピーチライターの仕事は幅広い。作者の原田マハは小説家だが「言葉を作る人の話」を書くのはかなりの挑戦だったのではないか。中に出てくるスピーチも当然書かなくてはならない。それも人の心を揺さぶる感動的なものにしないといけないのだから大変だ。

 

 この小説では普通のOLだった二ノ宮こと葉という女性が、伝説のスピーチライター久遠久美に弟子入りし、最後には「政権交代」をめざす野党の大切な演説を任されるまでが描かれている。

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【文学賞】Twitter文学賞、日本翻訳大賞&Twitter装幀賞、ただいま投票募集中!

 え〜っと、すべて2月5日投票締め切りです。う〜ん、盛りあがってるような盛りあがってないような。Twitter文学賞は今年で7回目になります。翻訳大賞は今年で3回目。Twitter装幀賞は今年できた賞です。なんでみんな同じ時期にやるのかな?相乗効果みたいなのを期待してるのでしょうか?あと、Twitter文学賞はホームページが機能していないのですごく不便。なんでもTwitterで、という考えは間違いだと思うなぁ。

 

 そのTwitter文学賞ですが、僕はいつも毎年のマイベストの最上位作を投票しています。というわけで国内編は角田光代「坂の途中の家」、海外編はランキングがなかったので該当作なしです。翻訳大賞も同じく、なし。装幀賞はちょっとうれしい賞ですが、どれにするかは考え中。「コンビニ人間」の表紙ってよく見るとおもしろいよなぁ、と思ったりもしますが…。投票すると結果が出るのが楽しみになるので、皆さんもぜひ一票を!

 

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【映像化】宮下奈都「羊と鋼の森」映画化決定!

 12月の中旬に発表されていました。2016年の本屋大賞を受賞した「羊と鋼の森」が映画化されるそうです。おぉぉぉぉぉ、これはちょっと楽しみ。とはいっても公開は2018年、まだかなり先ですね。キャスト、スタッフなども発表されていません。

 

 「羊と鋼の森」は調律師の物語ですが、主人公の外村の他にも先輩や同僚に魅力的な人物が多く、既読の人はキャストを考えるだけでも楽しいんじゃないかなぁ。あと、この物語の大きなポイントになる双子の姉妹、和音(かずね)と由仁(ゆに)はどうするんでしょう?こまどり姉妹はダメだろうし、リンリン・ランランもなぁ…。まさか、タッチじゃないよなぁ。新人なのかなぁ。

 

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【書評】吉田修一「怒り」-このプロット!この展開!このキャラクター!

 小説を読む時は、なるべく基本的なことしか情報として入れないようにしている。この物語で知っていたのは「犯人が逮捕されないままの殺人事件、その1年後、日本の3ヵ所に身元不明の男が現れる」という程度。「悪人」「さよなら渓谷」など、ミステリー性があり人間ドラマでもある物語を吉田修一は書く。今回もそういう話なのだな、と思った。

 

 千葉、東京、沖縄に出現する男たち、しかし、この小説でメインになるのは実は彼らではない。彼らと関わりを持つ人々の方だ。千葉の漁協で働く洋平とその娘愛子は働きたいという田代という男を受け入れる。新宿のアヤシい場所に出入りする優馬は直人と名乗る男と出会い、共に暮らすようになる。沖縄の女子高生の泉と同級生の辰哉は、無人島で出会ったバックパッカーの田中という男と仲良くなる。物語は常に彼らの側から描かれ、3人の男の側から描かれることはない。男たちの心が分かるのは会話の部分だけである。

 

 千葉、東京、沖縄、それぞれにそれぞれのドラマがある。そして、周りの人間は男たちが「何かから身を隠して生きている人間」なのだと認識し始める。そこに流れる「あの殺人事件」の犯人に対する報道と写真。

 

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