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【書評】窪美澄「ふがいない僕は空を見た」-主人公たちがいる場所のまっただ中からこの物語は発信されている

 これはもしかしたら…今年のベストかもしれない。「女による女のためのR-18文学賞」を受賞した短篇「ミクマリ」他4編が収められた連作短編集だが、登場人物はつながっているのでひとつの長編といってもいい。中心になるのは斎藤という高1の男の子。コミケで会ったあんずという主婦とコスプレセックスに明け暮れている。「R-18」という文学賞は「性全般をテーマにした小説」というのが応募条件なので、ハードな描写もある。そういうのはダメっていう人がいるかもしれないが、それだけでこの傑作を読まないのはもったいなさすぎる。

 

 ここに出てくる高校生たち、そして、彼らを取り巻く大人たち、みんなとてもとてもリアルだ。早くも自らの人生から脱落しそうな若者たち、がけっぷちのところでなんとか生きている彼や彼女、作者の窪美澄は「彼らがいる場所のまっただ中」からこの物語を発信しているように思える。だからこの小説はパワフルなのだ。

 

 「ふがいない僕は空を見た」は青春の物語というより「命」の物語といった方がピンと来る。その命の揺らめきに僕らはどうしようもなく震えるのだ。魂を揺さぶられ、同時に少しだけ元気をもらうのだ。斎藤の母が助産婦で出産場面が何度か登場する。この設定が非常に効果的だ。

 

 5編の中では斉藤の友人福田とバイト先の先輩田岡の物語が好きだ。田岡の造形が何ともいい。それにしても、この作家、文章もうまいし、構成も巧みで新人離れしている。窪美澄、恐るべし!彼女が次に何を書くのか、とてもとても楽しみである。

 

◎「ふがいない僕は空を見た」は2012年9月、新潮文庫で文庫化されました。

 2010.11.27 この本の次に読んでる佐藤多佳子「第二音楽室」がまたいい。同じ青春を描いてても全然違うのだけどこれもたまらないなぁ。

 

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