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【書評】村上龍「半島を出よ」-舞台は2011年の日本!今読むとこの小説はさらにリアルに感じる

 さて、なんだかまたあっち方面がきなくさいので、今日はこの小説にしてみた。村上龍の「半島を出よ」は2005年の3月に出て、僕はすぐ読んだのだが、まずはその直後の感想を。

 

 読むのに時間がかかった。たぶん、それはこの物語に僕自身がリアリティを感じることができず、とまどいがあったせいだと思う。2011年の日本のありようも、北朝鮮のコマンドたちが日本に侵入し福岡ドームを占拠することも、それに対する政府や在日アメリカ軍の対応も、きちんと受け入れることができなかった。でも、これは、ぼくがよく言う、リアリティのなさ、なのではない。村上龍が感じているリアルを僕自身がリアルと感じなかったということ。村上さんはこの小説について「持っている知識と情報と技術をフル動員して書いた。近未来予測が主眼ではないが、あり得る日本の姿です」と言ってる。それを受け止めるだけの想像力や知識がこちらには欠如しているのだ。悲しいことに。つまりは、現状認識が甘い、ってことだろうか。

 

 村上龍はさらに、北朝鮮の兵士たちの視点からも日本を描き、彼らの言葉で日本を語らせている。これもまたスゴいことだ。そしてこの物語をラストに導くはみ出し者の少年たちの存在も圧巻だ。というわけで、この物語、村上龍が突きつけてくる鋭い切っ先の刃を受け止められるか否か、あなた自身のリトマス試験紙なのかも。読んでみる価値は大いにある。

 

 

 というわけで、「半島を出よ」の舞台はなんと2011年だったのだ。文中にリアルという言葉が出て来るが、今読むとこの小説はさらにリアルなのかもしれない。本棚から引き出して、最初の方を読み始めたらどんどん引き込まれていった。う~む、やっぱりスゴいわ。

 

 

2010.11.25 窪美澄の「ふがいない僕は空を見た」読了。いやぁ、これは…ぶっとんだ。窪美澄、おそるべし!次は佐藤多佳子「第二音楽室」。

 

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