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【書評】角田光代「夜をゆく飛行機」-家族の変わらぬ時と変わりゆく時を描いて見事な物語

 2006年の作品で文庫化もされている小説だが良い評判を聞いたので読んでみた。明るいトーンの家族小説というスタイルにまず惹かれる。物語は受験を控えた高校生里々子の一人称で語られている。明るいと書いたが、この小説、明るさと共に深さとせつなさも併せ持っている。

 

 1999年の東京、谷島酒店は嫁いだ有子を含め、寿子、素子、里々子の四姉妹と父母のにぎやかな一家。里々子にはさらに心の友として生まれて来なかった末の弟「ぴょん吉」がいる。そんな谷島家に次々と事件が起こる。寿子が家族をモデルにした小説で新人賞を受賞する。それを読んだ有子が激怒しなぜか家に戻って来る。父の妹ミハルが急死する。父母は生活を脅かすスーパーの出現に戦々恐々とし、素子は店のエノテカ化なんてことを画策する。変わらないと思っていた暮らしが思いがけなく変わっていく。

 

 寿子の小説の中で一家は「永遠のくり返し」のような、まるで「サザエさん」みたいな日常を生きていた。姉妹がそれを読んだことが変化のきっかけになったのは確かだが、そうでなくても家族というのは自然に変わっていくものなのかもしれない。そんな変化にいらだち、取り残されたように感じていた里々子自身もいつの間にか恋をして変わっていく。小説の中で語られたその場所は、家族にとってほんのひと時の夢のような場所だったのだろうか。この小説は家族の「変わらぬ時」と「変わりゆく時」を描いて見事な物語になった。

 

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