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【書評】松家仁之「優雅なのかどうか、わからない」-後半になるにしたがって濃くなる陰影、生を思う深い余韻

  48歳の岡田匡は離婚し、15年余り住んでいた元代々木のマンションを出て、井の頭公園近くの一軒家で気ままな一人暮らしを始めた。最初の方はなんだかちょっとムカつく。結婚当時の回想なのだが、編集者であるこの男、マンションのリフォームと家具にやたらとお金をかけ、時代も時代なのだがやたらとバブリーな暮らしをしていたのだ。何だかなぁ、と思いながらそれでも読み進めていく。

 

 一人暮らしを始めた一軒家の話になるとそんな思いはすぐに消えてしまう。古い民家であるその家や周囲の自然を語る作者の描写!とにかくうまいのだ、松家仁之は。そして、昔の恋人、佳奈との再会。ここからは何だか男ってほんとしょうがないなぁ、って話なのかな、と思い始める。再会した若い彼女に激しく引きつけられ、青年みたいにふるまう48歳。思ってることも言えず、大人の恋の成熟もない。それはそれで何だかとてもいいのだけれど…。

 

 物語は後半になるにしたがって陰影が濃くなっていく。これからどう生きるのか、佳奈とはどうするのか。家のオーナーの園田さん、彼女から託された猫のふみ、海外にいる息子、そして佳奈の父親。それぞれのエピソードが物語に深みを与えている。前の2冊よりちょっと軽めの話かと思っていたが、最終的にはズシリと心に残った。松家の小説はいつも余韻が深い。

 

◯松家仁之のその他の本のレビューはこちら

 

 

 

2014.11.4 さて、広告のコンペも今日で終わり。もうひと頑張りしてみるか。読書はミロコマチコ「オオカミがとぶひ」。すごいっ!!

 

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