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【書評】カズオ・イシグロ「忘れられた巨人」-人は記憶に支配されているのか、それとも…

 読みだしてすぐにとまどった。とまどったまま読み進めていくと、何だかトールキンの「ホビットの冒険」でも読んでいる気になってしまった。カズオ・イシグロ久々の長編小説の舞台は、なんとアーサー王統治後のブリテン島。伝説の世界だ。ううむ。とはいえイシグロはこれまでもSF的な「わたしを離さないで」など様々なスタイルで小説を書いている。だからまぁこういうファンタジー的な物語でも驚いちゃいかんのだ。でも、やっぱり…。というわけで、ちょっとノロノロの読書になってしまった。

 

 「忘れられた巨人」の主人公はアクセルとベアトリスの老夫婦。小さな村に住む2人は息子に会うために旅に出る。しかし、この村、いやこの国自体が「健忘の霧」に覆われていて、誰もがいろいろなことをハッキリと思いだせないでいる。アクセルたちも息子がなぜ自分たちの元を去ったのかその理由さえわからない。旅の先では本当にいろいろなことが起こる。そして、この霧の原因もわかるのだが…。

 

 これは記憶にまつわる物語であり、老夫婦の愛の物語でもある。霧はすべての記憶を覆い隠す。良い記憶も悪い記憶も。この霧が晴れた時、ブリトン人とサクソン人という2つの民族がかつて憎しみ合っていたらしいこの国は、いったいどうなるのか。いろいろと事情がありそうなアクセルとベアトリスの2人はどうなるのか。ベアトリスは言う。「途中どんな紆余曲折があっても、(中略)アクセルとわたしは一緒に人生を思い出します」と。愛も憎しみもすべてを包み込んだ記憶。人は記憶に支配されているのか、それとも記憶によって救われているのか。

 

◯この本は2017年10月、ハヤカワepi文庫で文庫化されました。

◯カズオ・イシグロのその他の本のレビューや情報はこちらから

  

2015.10.2 ありゃりゃ、10月になっちゃった。ヤクルト優勝かぁ。パチパチパチ…。読書は池井戸潤「下町ロケット」!

 

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