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【書評】恩田陸「夜のピクニック」-もうひとつの本屋大賞受賞作、こちらも傑作!

 今回、本屋大賞を受賞した恩田陸さん、第2回目の「夜のピクニック」についで2度目の受賞です。この小説もいいんだよなぁ。というわけで、昔書いた書評にちょっとだけ手を入れてここに再掲します。

 

 第2回本屋大賞を受賞した恩田陸の青春小説「夜のピクニック」。これはもう、設定勝ち、だと思う。高校生活の最後を飾るイベント、全校生徒が夜を徹して80キロを歩く「歩行祭」の一日が舞台になっている。物語はその日の朝に始まり翌朝のゴールで終わる。そのほとんどが主人公たちが歩き続ける場面だ。歩く彼らに寄り添うように、僕たち読者も80キロの道のりを歩いていく。ふだんは何も起こらなくても、こういう特殊なイベントだと何かが起こる。修学旅行でもいいかもしれない。しかし、「歩行祭」は夜の闇の中。設定勝ち、というのはこのことだ。メインの話と脇の話のメリハリの付け方、このあたりにも恩田陸という作家の巧さが光る。そして、キャラクターの造形。あ~こういうヤツいたよなぁ、と思わずつぶやいてしまう級友たちがいい味を出している。

 

 主人公甲田貴子の密かな賭け、3年間誰にも言えなかった秘密をこの歩行祭の間に清算できるか。これがメインのテーマ。告白?さて、どうなんでしょう…う~む。とはいえ、彼らは青春のまっただ中。恋の話はあちらこちらで、そして、生きる悩みなど様々なことが語られる。いろいろいろいろある長い夜、そして、彼らはたどり着く、朝の陽射しがいっぱいに降り注ぐゴールへ。

 

 それにしても青春だなぁ、恩田マジックですっかり自分の高校時代に思いをはせてしまった。ただ、嫉妬まじりで言っちゃうと、こんなにクレバーで心優しい高校生なんて今どきいるのだろうか?いやいやここに登場する高校生たち、僕は大好きなのだけど。 

 

 2017.4.14 北朝鮮状況、なんだか怖いなぁ。とんでもないことにならなければいいけれど。読書は村上春樹「騎士団長殺し第2部」。

 

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