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【書評】ピーター・スワンソン「そしてミランダを殺す」-この展開はすごい!でも一番心惹かれるのは主人公の造形だ

 昨年のミステリーでは「カササギ殺人事件」とこの小説がランキングの上位を占めていた。どちらかを読みたいと思っていたが、結局、手に取ったのはこちら。なぜなら批評の中にパトリシア・ハイスミスの名前がチラチラと出ていたから。特にミステリー好きではないけれど、彼女の小説は好き。この物語は少しハイスミスの味がする。

 

 3部構成だ。語りは一人称で第1部ではテッドという男とリリーという女が交互に語っている。あぁ、この2人の物語なんだ、とまずは思った。空港のバーで出会った2人は意気投合し、いつの間にかよからぬ相談までし始める。第2部、冒頭であわわわわわわっ、という事実が分かってドギマギする。もう一度、1部に戻っていろいろ確認。この2部、語り手はリリーとタイトルにもなっているミランダ。テッドはどうした?と思っているうちに、2部のラストでまたまた、あわわわわわっ、が起こって再度ドギマギする。思わぬ展開。

 

  そしてラストの3部。キンボールという男が語り手として登場する。2部から出ている男なのだが、ヤツが語り始めたことで、イヤ〜な予感がする。3部は彼とリリーが語り手。いやぁ、この「作り」、巧すぎる。そして、ラストの1通の手紙。あぁ!でも僕は主人公(言わない)は生き延びるのではないか、と思っている。生き延びないわけがない。

 

 って、ストーリーも何も紹介しないのでなんのこっちゃ、とお思いでしょうが、この小説、とにかく主人公の造形が際立っている。もちろんいろいろあるけれど、この人間を楽しめばいい。不気味というのとは違う。このクールさはどこから来るのか?終盤、主人公はつぶやく。

 

わたしは胸に痛みを覚えた。なじみ深い感覚ではないが、なんの痛みかわかった。それは、自分のしたことに対する後悔やうしろめたさから生じているわけではない。そうしたものをわたしは感じていなかった。

 (中略)

そう、その胸の痛みは孤独感から来るものだ。この世にわたしの知ることを知る者は他にひとりもいないということから。

 

 すべてを胸にしまい、誰にも言わずに生きていることによる孤独感が「主人公」の造形を支えている。言っちゃっていいのか分からないが、こいつ、カッコいい!映画化の話もあるという。この役、いったい誰がやるのだろう?

 

◯勝手に帯コピー〈僕が考えた帯のコピーです〉

その殺人計画は空港での出会いから始まった。

殺人なんて、胸に秘めたら

孤独感だけですむ。

 

 2019.4.12  なんだかやることが多すぎる。いやいや自分で多くしちゃってるのかな?読書は大山顕「立体交差」。 

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