【コミック/感想】ニック・ドルナソ「サブリナ」-グラフィックノベル初のブッカー賞ノミネート！１人の女性の失踪からすべては始まる。スゴイぞ、ニック・ドルナソ！

サブリナ

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ニック・ドルナソ/藤井　光 早川書房 2019年10月17日頃

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　いやいやいや、これはスゴイ。ブッカー賞といえばカズオ・イシグロなども受賞しているイギリスの文学賞で世界的にも権威があるが、「サブリナ」はグラフィックノベルで初めてブッカー賞にノミネートされている。作者のニック・ドルナソはアメリカ人、2016年に「ビヴァリー」でデビュー。本書は2018年に発売。日本では昨年秋に刊行されている。

 

　あまりアメコミを読まないので左開きなので最初コマを追うのにも戸惑う。全体を覆う無機質なトーンやキャラクターにも違和感があった。ところが、読み進めていくうちにそのすごさが伝わって来て、ページを繰る手が止まらない。多分、アメリカ人にとってはもっと痛切な話なのかもしれない。

 

 　アメリカ・シカゴでサブリナという女性が失踪する。恋人だったテディはショックから旧友であるカルヴィンの家に身を寄せる。カルヴィンは１人暮らし。空軍基地に勤めていて妻子とは別に暮らしている。妹のサンドラのショックも大きい。そんな折、新聞社に若い女性が殺されるところを撮影したビデオテープが送られてくる。被害者はサブリナ。ティミー・ヤンシーという犯人も分かるのだが、ここからが怖い。ネットのフェイクニュース、SNSのデマツイート、テディの混乱と悪夢、そして狂気。カルヴィンまでとんでもない人物に仕立て上げられてしまう。さらに噂は噂を呼び、その後に起こった無差別殺人へと繋がっていく。 狂信的なラジオ放送、基地のメンタルヘルス調査などが背景として大きな役割を担っている。

 

　一つの事件からあぶり出されるアメリカの今。ネット社会の恐ろしさとそれに翻弄される人々。さらに深い闇を抱えているこの国の恐ろしさ。静謐な画面と無機質なキャラクターがさらに恐ろしさを増幅している。時代的であるけれど普遍的、アメリカの話であるけれど今の世界の話ともいえる強さがこの物語にはある。

DATA◆ニック・ドルナソ「サブリナ」（早川書房）3600円（税別）

 ◯勝手に帯コピー（僕が考えた帯のコピーです）

サブリナが

失踪した、殺された。

話はすべてそれからだ。

 

2020.9.23  ４連休の人出は吉祥寺もスゴかった。これからいろいろ緩和されちゃうけど大丈夫なのかな？？読書は松田青子「持続可能な魂の利用」。

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