NHKBSで放送されたドラマ「TRUE COLORS」の原作。源孝志はドラマの脚本と演出も担当している。これは向田邦子賞を受賞した彼のドラマ「グレースの履歴」も同じだ。このドラマで初めてこの人の存在を知ったのだが原作を読むのはこの本が初めて。
いやぁ、びっくりした。源孝志、本当に端正な書き手だ。文章から構成まで驚くほど見事。演出・脚本の仕事がメインなのだろうか?この人、もっともっと小説を書くべきだと思う。
有名なフォトグラファーで世界進出が目前の立花海咲。ところが彼女に致命的な目の病が見つかってしまう。それを知った育ての親で不倫相手でもあるファッション誌の編集長・巻上は彼女をあっけなく切り捨てる。病院での朝倉医師とのやり取り、写真の恩師との再会が印象的だ。これが前段、全体の3分の1もいかないところで故郷天草にいる妹の結婚報告、熊本の地震があり、海咲は導かれるように若い頃に捨てた場所に戻ることになる。母、妹、義理の父が住む天草。目の調子は次第に悪くなっていくのだが反対に環境はグレーな東京からカラフルな天草へと変化していく。その対比がおもしろい。帰っては来たものの母の再婚をめぐり家を飛び出した海咲は実家には帰れず、幼なじみの晶太郎がいるおじさんの家に身を寄せている。
そこで出会う人々、美徳先生、フランチェスカ夫人、井上神父、そして、結婚間近の妹。故郷の人々との再会、特に彼らが放つ言葉たちは海咲にとって失意の中にいる自らを奮い立たせてくれるものであり、読む者にとってもそれは大きな力になる。ラスト近くの母、義父とのシーンもいい。彼女がライカで撮るモノクロームの写真が新たな未来へのイメージを紡いでいく。そして、2つの感動的なラスト!これは強く心に残る一冊。ぜひ! ◆DATA 源孝志「わたしだけのアイリス」(河出文庫)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)