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【書評】 柴崎友香「続きと始まり」-人は常に続きの人生を生きている。これはコロナ禍を舞台に語られる3人の男女の物語


 タイトルがいい。すべてのものが続いている。その続きには終わりはなく、ずっと続いている。2020年3月から2022年2月まで、コロナ禍を生きる3人の人間の日常が各4話全12話、交互に描かれている。

 滋賀に住む倉庫でパートで働く20代の石原優子、東京在住で居酒屋の料理を担当する30代小坂圭太郎、フリーカメラマンとして東京で仕事する40代の柳本れい。夫々が先行き不透明なコロナの時代を家族の問題など様々なトラブルを抱えながら生きている。柴崎友香が描くその「リアル」がいい。確かに自分もそこにいた。そんな思いが静かに湧いて来る。

 大きな災害が起こると昔の凶事が心をよぎる。ここでも阪神・淡路大震災や東日本大震災の時の思いが語られる。それはコロナ禍の今と地続きで、彼らが抱えている過去の様々な思いともつながっている。「どの人にもどの場所にも、同じだけ時間が過ぎて、それは消えない」という優子の同僚の言葉が心に残る。

 「続きと始まり」はコロナ禍を舞台にした物語だが「コロナの時代」についての話ではない。主人公である彼や彼女の続いてきた人生とそこでの思いの物語だ。「自分が実際に体験したことなのに、自分がやったことなのに、なんでわからないんだろうね」「なんで、わからないなんて言えてしまうんだろうね」、常に不確かさの中で生きている人たち。「始まりはすべて  続きにすぎない  そして出来事の書はいつも  途中のページが開けられている」、小説内で紹介される詩の一節。人は常に続きの人生を生きている。過去の様々な出来事やそこでの思いは地層のように降り積もり、その人の今を作っている。ポーランドの詩人であるヴィスワヴァ・シンボルスカ、彼女の詩がこの物語の大きなテーマをしっかりと支えている。
◆DATA    柴崎友香「続きと始まり」(集英社)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)