また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【書評】柴崎友香「帰れない探偵」-事務所にも自分の国にも帰れなくなった探偵は…。何度も読み返してみたくなる物語!

 

 「今から十年くらいあとの話」というフレーズで各章が始まる物語。未来の話が過去形で語られるスタイルからなのか、話の内容からなのか、外国の小説を読んでいるような趣がある。

 最初の章、世界探偵委員会連盟のフリーの探偵としてある街で働いていた主人公は、ある日、急に自分の事務所兼住居に帰れなくなる。帰れないのはそれだけではない。彼女の育った国は大きな自然災害とパンデミックの後に急に統治体制が変わり、外交関係は断絶し、その時に国外にいた彼女は自分の国にも帰れなくなってしまっていた。デラシネ、という言葉がふと浮かんだ。

 彼女は連盟の指示ややはりフリーとして働く先輩の仕事でいろいろな国で人探しをしたり、過去の事件について話を聞いたりしている。しかし、それは仮の暮らしでしかない。彼女はずっと「一時的に」どこかにいて、また別のどこかへと移っていく。自分が「帰れないのか、帰りたくないのか」さえ分からないままで。

 最終章は不思議なほどドキドキする。この物語は一体どこに着地するのか?探偵であることに少し疲れてしまっていた彼女が出会う場所、出会う人々。そこで流れる音楽!彼女が言う「ここに存在して流れていた時間を(私は)見ようとしていなかった。遠くから、自分のことを伝えようともしないで、変わったとか変わっていないとか、勝手に思っていただけだった」と言う言葉が強く心に残る。この最終章は本当に力強い。柴崎友香の探偵小説を超えた探偵小説。こんなの書いちゃう柴崎友香、恐るべし!何度も読み返したい物語だ。 ◆DATA 柴崎友香「帰れない探偵」(講談社)

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)