また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【文学賞】第8回Twitter文学賞、決まりました。国内部門1位は加藤シゲアキ「チュベローズで待ってる AGE22」

 日曜日に発表されたのですが、なんだかいろいろとあったようで(なかったのかもしれないのだけど)ブログに書くことを控えていました。でも、ま、個人的には「いいかな」って感じになったので、例年同様、掲載することにします。

 

 国内部門は加藤シゲアキさん「チュベローズで待ってる AGE22」、が1位に選ばれました。パチパチパチ!加藤シゲアキ、読んでない。「AGE22」に続く「チュベローズで待ってる AGE32」もあるのか。おもしろいのかなぁ?

 

 2位佐藤亜紀「スウィングしなけりゃ意味がない」、3位松浦理英子「最愛の子ども」と続きます。あ、僕が投票した川上弘美「森へ行きましょう」は3票を獲得して15位でした。え〜〜〜〜っ、もっと上に行くと思ったのに。しくしく。

 

 海外部門は、コルソン・ホワイトヘッド「地下鉄道」です。パチパチパチ!アマゾンでの紹介はこんな感じ。

 

ピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞、カーネギー・メダル・フォー・フィクション受賞。
19世紀初頭のアメリカ。南部のジョージア州にある農園での奴隷少女コーラは、ある日、自由な北部を目指して農園から逃亡することを決める。轟々たる音を立てて暗い地下を走る鉄道、〈地下鉄道〉に乗って――。しかし彼女の後を、悪名高い奴隷狩り人リッジウェイが追っていた。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2018.3/2週)

 出た雑誌。「BRUTUS」の最新号の特集は「東京らしさ」。「みんなで考える、東京の今とこれから」というサブタイトルが付いている。五輪に向かってさらに変貌をとげる巨大シティ・東京。Amazonの紹介をみると読みたい記事がたくさんあるぞ。

 

 出る本、「スイート・ホーム」(3/8)はアート小説じゃない方の原田マハ。小さな洋菓子店を舞台にした連作短篇集らしい。連作短篇ってなんだかいいよなぁ。ううむ。

 

 あとは文庫化が3冊。宮部みゆき×半藤一利「昭和史の10大事件」(3/9)が文庫に。Amazonの紹介文はこちら。

 

昭和史の大家と天才小説家は下町の高校の同窓生!二・二六事件から宮崎勤事件、日本初のヌードショーまで硬軟とりまぜた傑作対談。

 

 

  あぁ、ビックリした。同級生じゃなくて「同窓生」かぁ。そうだよなぁ。しかし、この2人の歴史をめぐる対談はおもしろそう。

 

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【広告コンペ】宣伝会議賞で協賛企業賞をいただきました。パナソニックと三菱電機の2つです

 というわけで、僕はプロフィールにもあるように「そんなに若くはないコピーライター」なのですが、若い頃にやっていた広告コンペへの応募を6年前ぐらいから再開しています。

 

 広告関係の読者には言わずもがなですが、そんなコンペの中でも宣伝会議賞は広告コピーの賞として最大のものなので、今回の協賛企業賞受賞はとてもうれしいです。36年前に受賞経験があるのですが(って、あんたいったい幾つ?)、最近のこの賞はすごい応募数で再挑戦の数年はまったく結果が出ず、なんだかなぁ、と思っていました。そのうち、これはなんか違うんじゃないか、なんてことも思ったりして。ま、コンペっていうのはあくまでコンペで実務とはまったく違うもののようです。

 

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【エッセイ/感想】石田ゆり子「Lily-日々のカケラ」-魅力的な素直な物言いと地に足がついた生き方

 帯に糸井重里さんが書いている。「こんなに素直にたくさん書いてくれたけど、ゆり子さんのよさを、いちばん知っていないのは、ゆり子さんだという気もするのだ。」、そうなんだよなぁ。あれだけウイットに富んだ驚くほど素敵な文章を書いてるのに、彼女はそのことにも気づいていない。なんだかすごいなぁ。

 

 僕が石田ゆり子の文章に魅せられたのは「ほぼ日」で連載されていた「はなちゃんの夏休み」というエッセイを読んでからだ。「冬休み」「秋休み」なども交えて断続的に4年ほど続いたそれは、愛犬のラブラドール・レトリバーはなちゃんから届くお便りというスタイルで書かれている。平易な言葉での表現は実はかなり難しいのだけど、彼女は本当に楽しそうに愛犬や愛猫の日常を言葉にしている。彼らへの愛もしっかりとプラスして。石田ゆり子すごいぞ、と当時僕はいろんな人に伝えた。あ、今彼女はインスタグラムをやってるけど、そこでの文章もいいのよねぇ。

 

 さて、「Lily-日々のカケラ」、このエッセイを通して感じるのは文章のうまさ云々よりも、そのとても素直な物言いとキチンと自分を持っている地に足がついた生き方だ。たとえば、キョンキョンなんかだと、その言動から「そーゆー人」だというのがとてもよくわかる。でも、石田ゆり子の場合は、なかなかわからない。いやぁ、この人って…。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2018.2/5週)

 さて、出た雑誌。「芸術新潮」3月号の特集は「超老力」、横尾忠則と香取慎吾の表紙が印象的です。「大先輩にまなぶ、アートと生きるゴールデンエイジ」という副題でも分かるように美術界に生きる「超老」たちの大特集。表紙の2人の対談をはじめ篠田桃紅さん、安野光雅さんなどなどの生き方に迫っています。モネやマティスなどの「老作」にも注目!これはぜひぜひ読みたいぞ。

 

 出る本が3冊。角田光代の短編集「私はあなたの記憶のなかに」(2/26)は、直木賞受賞前後に発表された8つの短編を集めたもの。角田さんは短編もいいからなぁ。買っちゃいそう。

 

 浅生鴨「伴走者」(3/1)はNHKツイッターの「中の人1号」で話題になった著者の最新小説集。ほぼ日で糸井重里さんがこんな感想を書いています。ちょっと長いけれど引用しますね。

 

 主人公は、視覚に障害のある

 元サッカー選手のマラソンランナーと、

 アルペンスキーの女子高校生の選手‥‥ではなく、

 彼らの目の役割をしながら、いっしょに走る「伴走者」。

 選手と走るし、滑るのだから、

 その競技種目についての相当の実力がなければならない。

 変化する状況を的確に伝え、次の瞬間に備えながら、

 少しでも速く、不安を感じさせずに力を発揮してもらう。

 そういう役割をするのが「伴走者」です。

 「ブラインド」の男子マラソンの選手は、

 晴眼の女子マラソン選手ほどの速度で走るそうです。

 また、アルペンスキーの選手の滑降速度は、

 時速100キロということです。

 目からの情報がないままに、それをするということを、

 目の見える者はまず想像できません。

 徹底的に想像力を鍛えていかないと、

 伴走者という仕事はできません。

 作者は、この「伴走者」という役割を視点にして、

 哲学的でサスペンスにあふれる

 事実のような物語を生み出しました。

 (すみませんね、つい言い方が大仰になってしまって)

 この小説が世に出ることで、いくつかのことが、

 大きく変わるのではないかと、ぼくは考えています。

 パラリンピックが、障害についての考え方が、

 目的や競争という概念が、読者のこころの一部分が‥‥。

 

 ことばが尽きません、27日の発売を、待っててください。

  (「ほぼ日刊イトイ新聞」2月1日「今日のダーリン」より)

 

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【賞いろいろ】2018新書大賞は前野ウルド浩太郎「バッタを倒しにアフリカへ」!

 新書大賞、少し前に発表になっていましたね。今年の大賞は前野ウルド浩太郎さんの「バッタを倒しにアフリカへ」、パチパチパチ!これ話題になっていましたね。バッタ研究者である著者がモーリタニアにサバクトビバッタを倒すために旅立った時の記録。さてさて、バッタ被害は食い止められるのか?こういう内容が新書になって、しかも大賞を取っちゃうのはちょっとうれしいなぁ。

 

 新書大賞は中央公論新社の主催で11回目。2016年12月~2017年11月に刊行された1600点以上の新書が対象です。有識者、書店員、各社新書編集部、新聞記者など新書に造詣の深い86人が投票しています。

 

 以下、5位までを紹介しますね。

 

 大賞

2位

3位

4位

5位

 

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【書評】原田マハ「たゆたえども沈まず」-この物語の真ん中には常にゴッホがいる

 「たゆたえども沈まず」という小説はけっしてフィンセント・ファン・ゴッホの物語ではない。日本美術を世界に知らしめようとパリで孤軍奮闘する日本人、林忠正の物語であり、林に誘われ彼の片腕となる加納重吉と一流画廊で支配人を務めるゴッホの弟テオの友情物語、そして、兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオと弟にすべてを頼り絵を描くことだけにのめり込んでいくゴッホとの兄弟物語、この3つが複合的に絡み合ったアート小説なのだ。

 

 それでも、この物語の真ん中には常にゴッホがいる。浮世絵、印象派、その次に続く人々、絵画を通してそれぞれの思いが交錯し物語は進んで行くのだが、林や加納のことが語られている時でも、ゴッホの存在が強く強く感じられる。それがこの小説の大きな魅力だ。

 

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