これは、戦後日本最大ともいわれた東京都庁の建築コンペの話である。実はこのコンペ、それまでの経緯を見ても、審査員の顔ぶれを見ても、「天皇」丹下健三の事務所が圧倒的に有利で、当時は「出来レース」とさえいわれていたそうだ。「ぶっちぎりで勝とう!」と連呼する丹下。それに立ち向かうのが全9社のうち唯一の弱小?事務所、磯崎アトリエの磯崎新だ。
丹下対磯崎、著者平松剛がなぜこの2人の対決に注目したのかといえば、磯崎は丹下の愛弟子だったからだ。そして、この2人はその時すでに、戦後日本を代表する建築家でもあったのだ。内容をコンペにしぼって書く、という方法もあっただろう。しかし平松は、丹下の人生を描き、磯崎の人生を描き、それによって、日本建築史のメインストリームを描く道を選んだ。だから、コンペ結果のくだりなどはあっさりしすぎていて、ややおもしろ味にかける。ま、大逆転など起こるはずもない出来レースですからね。
それにしても、都側の意向も無視して、唯一「低層案」をぶつけた磯崎、大した男である。ラストがとてもいいのだが、このラストは読んでのおたのしみである。
2010.8.30 父親が建築家なのにうちは兄弟二人とも文系、どういうことだろ?でも、建築はけっこう好き「建もの探訪」なんて録画して毎週見てるもん。
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