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【書評】小川洋子「琥珀のまたたき」-幽閉された子供たちのピュアではかない暮らし

 

琥珀のまたたき 琥珀のまたたき
小川 洋子

講談社 2015-09-10
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 小川洋子は尋常ではない状況に置かれた人間たちをよく描く。近年では「人質の朗読会」が思い出される。「琥珀のまたたき」もまた、そういう物語である。この話の主人公は琥珀という名を与えられた1人の少年。彼には姉のオパール、弟の瑪瑙(めのう)という姉弟がいる。

 

 末妹は病で亡くなったのだが、彼らの母親はその原因になった「魔犬の呪い」から逃れるという口実で、3姉弟を父親が残した別荘に閉じ込める。彼らは敷地内から出ることも許されず、母親は日々、療養施設に働きに出かける。幼い3姉弟だけの時間。小川洋子の静謐な筆致で描かれる子供たちの日々。それは、けっして退屈なものではなかった。彼らは自由な発想で様々な遊びを生み出していくのだ。

 

 ある日、琥珀は自らの左目に異常を感じ、見えにくくなった目の中に亡くなった妹の姿を見出す。そして、父親が残した大量の図鑑の片隅にその姿を描き留めることを始めるのだ。それはパラパラ漫画のように活き活きと妹の姿を蘇らせる。母と姉弟たちと皆でそれを見る場面が強く心に残る。この小説は3姉弟の暮らしを描くと共に、アンバー氏と呼ばれる年老いた琥珀の姿も同時に紹介していく。老人が人々に見せる「一瞬の展覧会」の描写もとても美しい。

 

 ピュアではかない彼らの暮らしを見つめる作者の目は優しく慈愛に満ちている。しかし、そういうものが長く続かないことを作者もそして僕たちもすでに知ってしまっているのだ。

 

◯小川洋子のその他の本のレビューはこちら

 

2015.12.20 作詞家の岡本おさみさんが亡くなった。「落陽」など吉田拓郎の歌をたくさん思い出す。読書は東山彰良「流」。

 

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