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【書評】窪美澄「アカガミ」-現代の若者に対する危機感と国が家族のカタチを決める怖さ

 

 舞台は2030年の日本。「異性の体を直に見たいとは思わない、触れてみようとは思わない」、そんな若者たちばかりになってしまったこの国。彼らは性だけではなく生にさえ興味を失い、自殺者ばかりが増えている。この設定に僕がリアルを感じるのは、「アカガミ」を読む前にテレビでまさに「そういう若者」を見てしまったからだ。現代とまさに地続きだと思えるこの未来では、国が「アカガミ」というお見合いのような制度を立ち上げて、状況を打開しようとしている。

 

 主人公のミツキは老人福祉施設に勤めているが、彼女もまた他者に興味などなく、恋愛はもちろん、その感情すら理解することができない。自殺をはかった彼女はログという女性に助けられ、彼女のすすめで「アカガミ」に志願する。教習所では映画やドラマなどを題材に恋愛やセックス、結婚、家族というものを学び、選ばれた誰かと「番い(つがい)」になるための準備をするのだ。

 

 相手に選ばれたのはサツキという男。彼らが家族になるまでのプロセスに心惹かれるのは普通ならばもう恥ずかしくて書かれないようなウブな恋や性への思いが描かれているところだ。その手探り感がなんだか愛おしい。2人はやっと番いになり、ミツキは妊娠する。彼らは国家によって衣食住が保障され、子供ができたことでさらに特別な扱いを受けるのだが…。

 

 デビュー作から生と性を描いてきた窪美澄は、この物語を通して現代の若者に対する危機感、さらには、国が家族のカタチを決めつけてしまう怖さを描いている。「アカガミ」というタイトルをつけたことで、ラストはすでに暗示されていてそこには希望はないが、ミツキとサツキ、2人の心の中に芽生えたものに僕はかすかな希望を感じた。

 

◯窪美澄の他の本の書評はこちらです

  

   

2016.7.3 まだ梅雨なのに暑い!ムシ暑い!やめてくださいっっっ。読書は宮部みゆき「希望荘」。暑いので進まない。

 

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