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【書評】松家仁之「光の犬」-一族三代の「営み」を見つめ、「生」を語り「死」も語る傑作小説!

 物語は「添島始は消失点を背負っていた」という印象的な一行から始まる。これは北海道東部の架空の町・枝留(えだる)で暮らす添島家の一族三代の物語だ。一番若い世代が始と姉の歩。彼らの父母、眞二郎と登代子。眞二郎の姉の一枝、妹の恵美子と智世。さらに始たちの祖父母である眞蔵とよねが主な登場人物。

 

 とはいってもこの物語、時系列順に語られたりはしない。巧みな構成で時代を変え、主人公を変えながら進んでいく。話によって、それは青春小説であり恋愛小説であり職業小説であり介護小説、老人小説、闘病小説でもある。それぞれが深く凝縮して語られるのでそれを単なる「エピソード」と呼ぶことはできない。

 

  この小説を読んで一番感じるのは「営み」という言葉だ。家族ではあるのだけど常に向きあっているわけではない人と人。それぞれがそれぞれの人生を生きている。日々の営みが彼らを少しずつ死へと近づけていく。作者は少し離れた場所からその営みを見つめ、美しく静謐な文章で正確にトレースしていく。その見事さ!彼らの暮らしにひっそりと寄り添うようにいる北海道犬の描写も控えめではあるけれど、とても印象的だ。様々な物語の中では始の姉の歩と同級生の一惟(いちい)との長くて短い交流が強く心に残った。この物語には「生」がある。同時に「生」に連なる「死」をも語る物語である。

 

 アメリカの女性画家であるコーネリア・フォスの装画が素晴らしい。読後にじっと見つめているとこの絵に物語に通じる何かを感じる。年末までに読んでいれば確実にマイベストの上位に入ったであろう傑作だ。

 

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 2018.1.31 東京地方、明日明後日の雪はどうなんでしょう?やめて欲しいぞ。なんだかちょっと冬バテ気味。読書は原田マハ「たゆたえども沈まず」。 

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