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【ノンフィクション/書評】沢木耕太郎「凍」-息苦しいほどのリアリティ!本を離れても2人はそこにいる

 世界的クライマーである山野井泰史とこれまた女性では世界一とも評される妻の妙子、希代のクライマー2人が難峰ギャチュンカン北壁登頂に挑んだ数日間を描いたノンフィクション。それにしても、この克明な記述は何だろう!2人に聞き書きしてまとめたものを読みながら、さらに手を入れる、こんな作業を何度も繰り返したのだと思うとめまいがしてくる。この本を読んでる間、読者は、本を離れている時間でも2人のことを忘れることができない。頭の中で彼らは、吹雪の中で垂直に近い壁に張り付いたままだし、10センチあるかないかのところで立ったままビバークしているのだ。息苦しいほどのリアリティ!

 

 クライミングのスタイルには多人数でキャンプを作りながら登頂をめざす「極地法」と少人数あるいは単独で酸素ボンベも持たず一気に山頂を目指す「アルパイン・スタイル」があるという。山野井の登り方は後者だ。極地法にもドラマはあるだろうが、それは人間ドラマだろう。一方、アルパインスタイルの場合は、自然とのドラマなのだ。

 

 より自由だがより厳しいスタイルでの登頂を目指す山野井夫妻、だからこそ、僕らは2人に強い共感を寄せ、彼らと共に北壁を登る。文句なしの傑作!!

 

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