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【書評】中島さなえ「いちにち8ミリの。」-中島らもの娘のデビュー作、文章にも破綻はないが…。

 中島らもは好きな作家だったので、その娘のデビュー作となれば読まないわけにはいかない。どういう意味だかよくわからないがタイトルもなかなかいいし。

 

 この本には3つの短篇が収められている。最初は、木の上にずっと昔から住みついているゴリづらと呼ばれる男の子と少女の話「ゴリづらの木」、忍者の末裔である荒巻小太郎が抜け忍の末裔の男を探し出し殺そうとする「手裏剣ゴーラウンド」、そして、表題作になっているちょっと長めの「いちにち8ミリの。」。これは簡単に言ってしまえば石と猿の話。美澄という女性の飼い猿である壮太、その美澄に想いを寄せ、毎日8ミリだけ彼女の家が見える場所まではいずっている石、そんな彼らを待ち受けているのは?

 

 この短編集、読んでいて、途中でちょっと困った。ここに感想を書くのだけど、はてさて、どうしたものか?けなす要素はそれほどないが、ほめるとなるとちょっと難しい。どれも設定がユニークだし、文章にもそれほど破綻はない。表題作などは、ラストに向かっての盛り上がりはなかなかのもので一番おもしろく読めた。ただ、会話でテーマみたいなものをしゃべってしまうとなんだかとてもつまらなくなる。ま、デビュー作だし、という思いと、デビュー作だからこそ、という思いが交錯する。中島さなえ、期待できる新人であることには違いない。2作目、3作目を期待して待ちたい。

 

○中島さなえ「いちにち8ミリの。」は2013年10月、双葉文庫で文庫化されました。

2010.10.12 今頃になって「考える人」夏号の村上春樹ロングインタビューを読んでいるのだけど、これがすこぶるおもしろい。今まで読んだ中でも一番読み応えがある。インタビュー集「夢を見るために毎朝~」はどうなのだろう?

 

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