去年の話題作。タイトルが気に入っていて、読んでみたかった。しかし、最初から何だかガクッとくる。主人公である郵便配達員の彼は、頭が痛いので病院に行くと、診断は脳腫瘍、しかもステージ4。余命は長くて半年、1週間すら怪しい、という。ええっ!こんな話?さらに、ここに悪魔が登場する。「アタシ、悪魔っす!」って感じで。ううううむ、ついていけない…楽しみにしてたのに…止めるか。と、心折れたまま読み進めて行くと…。
「アッ!」と思う瞬間がある。あ〜なるほどなぁ、こういう話だったのか、作者がやろうとしてるのはこういうことなのか。その時、初めて「小説だが、これはむしろ哲学書なのではないか」という帯の角田光代の言葉が理解できる。非常に軽いタッチで書かれてはいるが、ここで語られているのは本当に大切なことばかりだ。
悪魔は彼に言う。「この世界からひとつだけ何かを消す。その代わりにあなたは1日の命を得ることができるんです」と。最初は電話が消え、次に映画が消え、さらに時計が消え…。そういう設定の中で、電話自体について語られ、電話のない世界が語られ、電話のない「私」が語られていく。何かを奪いながら生き延びることで気がつく自らの「生」とこの世界。さらには物語で大きな比重を占める、母との関係、父との関係。「世界から猫が消えたなら」は、まさに軽くて深い物語!話題になったわけがよくわかった。川村元気は「電車男」「告白」「モテキ」「悪人」などの映画プロデューサー。これが初めての小説である。
◎「世界から猫が消えたなら」は2014年9月、小学文庫から文庫になりました。
2014.6.9 今日は晴れ間も出てますが、梅雨に入ったとたん、つゆつゆしててなんだかヤな感じ。と思ってるうちにワールドカップですねぇ。ドキドキ。日曜日が楽しみ!読書は逢坂剛「百舌の叫ぶ夜」。
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