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【書評】村田沙耶香「殺人出産」-クレイジー紗耶香、全開!

 そうか、そうか、これがクレイジー紗耶香か。村田の作品は「しろいろの街の、その骨の体温を」「消滅世界」、そして「コンビニ人間」を読んでいる。作家仲間からクレイジーと呼ばれているのは知っていたが、この3作は、少しその気配はあるものの、クレイジーというほどではない。でも、これはねぇ。中編の表題作と短編の「トリプル」「清潔な結婚」、超短編「余命」の4作が収められているが、どれもがクレイジー!


 この4編に共通しているのは、今の時代のいわゆる「既成の概念」が古くなってしまった未来社会の話だということ。しかも、そのぶっ壊し方がすごい。「殺人出産」は少子化が進んだ1世紀後の日本が舞台で、そこには10人産んだら1人殺していいという「殺人出産システム」がある。これは命を生み出すための合理的なシステムと考えられていて「産み人」も殺される側の「死に人」もあがめられている。ある日、主人公は「産み人」である姉が10人目を出産したことを知るのだが…。さて、姉は誰を殺すのか?その先に待っているものは?


 「トリプル」は10代の間でカップルではなく3人で付き合うことが当たり前になりつつある世界の話。「清潔な結婚」は性が排除され、恋愛感情抜きでパートナーとして暮らす夫婦の話。「余命」は医療が発達して「死」が無くなってしまった世界、みんな「そろそろかな」と思った時に好きな方法で死んじゃうのだ。

 

  共通してすごいなと思うのは、何だかコッチの方がいいんじゃないか、コッチの方がまともなんじゃないかと、村田沙耶香に見事にまるめこまれちゃうこと。不思議な説得力というか、リアリティがあるのだ。いやぁ、こういうの好きだな。クレイジー沙耶香、もっと読みたいぞ。

 

○村田沙耶香の他の本の書評等はこちら

 

 

 

 2017.8.18 東京は昨日まで17日連続で雨。今日はどうなのでしょう?。読書は燃え殻「ボクたちはみんな大人になれなかった」。

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