土佐から度々上京し東大の植物学教室に出入りするようになると周囲の影響もあって彼の植物愛、研究への熱意はとんでもないものになっていく。そのために資料となる本を買いまくり、採取旅行へと何日も出かけ、そのうち自費で雑誌を作り、本を出し、借金は莫大なものになる。それを知ってか知らずか、いい宿に泊まったり、新たな雑誌創刊に動いたりするものだから、読んでるこちらもオイオイオイとなってしまう。さらに大学との軋轢があり、元々大学を出た人間でもないので出世もできない。
彼には土佐で結婚した猶がおり、東京にスエと言う女性がいる。猶とはどうも気が合わないのだが、2人とも素晴らしい女性で猶は富太郎がいなくなった後の実家である店を支え、東京の家の窮状を救ったりもする。すえの方は極貧の中でも夫を支え子供を育て泣き言をいうことも少ない。この2人の存在が富太郎を支えたと言えるだろう。
朝井まかては人物伝に定評があるが、常に細やかでリアルな文章が素晴らしい。稀代の植物学者・牧野富太郎のそのゴロリとした魂をそのまま読者の元に届けてくれている。タイトルの「ボタニカ」は植学の意味。「種子」という意味もある。興味がある人はぜひ一読を!
◆DATA 朝井まかて「ボタニカ」(祥伝社)1800円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)
◯朝井まかては「眩(くらら)」もよかった!
◯牧野富太郎は2023年前期の朝ドラになります
2022.6.29 暑いです。暑いです。6月なのに超暑いです。読書は絲山秋子「まっとうな人生」。
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