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【書評】ローリー・リン・ドラモンド「あなたに不利な証拠として」-元警官の作者が女性警官の懊悩を描いた大傑作!

 僕が今一番新作を待望している作家、それがこのローリー・リン・ドラモンドだ。それほどにこの「あなたに不利な証拠として」は素晴らしいできばえの小説だった。

 

 女性警官たちを主人公にした連作短編集で、それぞれの主人公の名がタイトルになっている。キャサリン、リズ、モナ、キャシー、サラ。最初のキャサリンの物語から、僕らは彼女たちが生きている世界にグイグイと引き込まれていく。キャサリンは職務中に強盗を射殺した。元警官の作者は、女性警官の日常の行動を、事件現場の状況を、彼女が射殺にいたるまでの心の動きを、その後の懊悩する姿を、そのすべてを精緻なタッチで描いていく。まるでその場にいるように。苦しみもがくキャサリンの側にいるように。

 

 交通事故で辞職を余儀なくされたリズ、同じ警官である父親との確執に苦しむモナ、レイプ事件の被害者との因縁めいた関係に驚くキャシー、ある事件のあと職場を捨てニューメキシコに逃避したサラ、それぞれの話が同じようにリアルに描かれ、読後に大きな余韻を残す。作者が現場をよく知っている、ということだけではこんな小説を書くことはできない。彼女の洞察力、観察力、表現力が素晴らしいのだ。警察小説ではない物語もぜひ書いて欲しい。この人の作品なら絶対すごいに違いないから。文庫版も出ているが表紙があまりにひどい。ここはやはりポケミスで読みたい。

 

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