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初々しさとしたたかさ、佐藤多佳子のデビュー作「サマータイム」。

「サマータイム」を聴くたびに思い出す。3人が出会ったあの夏。

サマータイム (新潮文庫)サマータイム (新潮文庫)

新潮社 2003-08
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 「一瞬の風になれ」ですっかりブレイクした感がある佐藤多佳子。僕

は「しゃべれどもしゃべれども」あたりからのファンだが、デビュー作

「サマータイム」は今回初めて読んだ。これは、佳奈と進という姉弟と

片腕を交通事故で失った広一という少年の物語。4つの話が連作という

形で収められている。佐藤多佳子はテンポのいい語り口が魅力の作家。

ムダなく、気持ち良く、軽やかに話が進むから主人公たちにも感情移入

しやすい。

 表題作「サマータイム」が第1話。佳奈が小6、進が小5、広一が中

1、彼等が出会ったある夏の話だ。タイトルのサマータイムはあの名曲、

広一がピアノで弾くスタンダードナンバーだ。彼の母はジャズ・ピアニ

ストで、隻腕の広一もピアノを弾く。そして、佳奈も進も。彼らはピア

ノを弾くことを通じて、どこかで結ばれている。それぞれの物語は高校

生になった進、佳奈、大学に通う広一の回想という形で語られる。「あ

の夏」の出会いから、それぞれの心に確かな変化が生まれ「今」に息づ

いている。ただの思い出ではなく、彼等の中でその出会いはとても大き

なものだったのだ。

 気が強く、友達を引き連れて歩くような佳奈のキャラクターが抜群。

広一の母友子や、そのボーイフレンド種田、調律師のセンダくんなど個

性的な脇役たちもいい。そして、この物語にはいつもピアノの響きとき

らめくような夏の光が感じられる。初々しさいっぱいのデビュー作だが

それ以上に佐藤多佳子の巧さ、したたかさを感じる佳作だ。

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