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【書評】リュドミラ・ウリツカヤ「女が嘘をつくとき」-物語がガラリと裏返るラストが見事!

 ロシアで最も人気のある女流作家リュドミラ・ウリツカヤ。このブログでも「ソーネチカ」を紹介しているが、最新作である「女が嘘をつくとき」もまた読ませる。6編の物語からなる連作短編集。ジェーニャという女性と彼女の人生に登場する嘘をつく女たちの話だ。舞台は70年代から90年代にかけてのモスクワ。1話から時系列的に話は進み、ジェーニャの人生もめまぐるしく変わっていく。周囲にいる嘘をつく女の話とジェーニャ自身の人生、このミックスぐあいが本当に巧い。さすが、ウリツカヤである。

 

 女たちの嘘はけっして実害のあるものではない。どちらかというと嘘をつくことで彼女たち自身が救われ、解放されている。男はこんな嘘をつくだろうか? 有名な文学教授がその晩年に世間知らずの少女につく嘘が特に印象的だ。ラストの一編。ここでジェーニャの身に大きなアクシデントが起こる。仕事もテキパキこなし、一生懸命生きてきた彼女が人生の危機に見舞われるのだ。この話がラストに来ることで、物語がガラリと裏返る。そうかぁ、こういうことができるんだなぁ。見事!

 

2012.8.3 8月であります。五輪サッカー、意外なことに男子まで決勝Tに残ってしまい、しかも、試合は深夜が多く、もう大変。読書は小川洋子「最果てアーケード」。さぁ、今夜はなでしこ!

 

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