また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【書評】北村薫「八月の六日間」-アラフォー女子を山が救う!

 北村薫の文体は独特だ。時々、知が勝ちすぎる物語もあるので、当然読者を選ぶ。そんな彼が山登りの小説を書いた。へぇ〜どんな感じだろうと思って読んでみると、北村薫はやっぱり北村薫だった。


 しかし、誤解があった。山登り小説だと思っていたけれど、そうではなかった。確かにこれを読んで山に登りたいと思う人は多いだろう。特に女性は強く思うかもしれない。実際、文庫の解説を書いた書評家の瀧井朝世も登り始めたらしい。


 この小説の主人公「わたし」の周りでは辛いことばかりが起こる。上司である編集長は困ったちゃんで仕事は大変だし、長い間友人であった女性を突然亡くしてしまうし、5年前に別れた男の結婚話を聞いてしまう。山は、そんな彼女の「救い」になっている。自然の脅威に向かい合うことでよけいなことを考えなくてすむからだ。グループではなく一人の登山だから自分の好きなようにできるからだ。

 

続きを読む

【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2017.8/2週)

 出た本。俵万智の5つ目の歌集「オレがマリオ」が文庫になりました。東日本大震災後に仙台から息子と共に石垣島に移住した俵さん。収録されている幾つかの歌を読んで気になっていました。紹介文から引用してみますね。これは買おうかなぁ。

 

「電信柱抜けそうなほど揺れていた」震度7とはそういうことか


空腹を訴える子と手をつなぐ百円あれどおにぎりあらず


子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え

醬油さし買おうと思うこの部屋にもう少し長く住む予感して


第三者的には「軟禁」とも言える車を持たぬ離島の暮らし


「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ

 

 太宰治賞他受賞のデビュー作「さようなら、オレンジ」、坪田譲治文学賞受賞の2作目「Masato」、デビューから高い評価を受けている岩城けいの新作「ジャパン・トリップ」が出ました。オーストラリアから日本にやってきた9人の子供たちの7日間の大冒険!異文化と触れ合いそれを乗り越えていく人々を描く彼女の作品はやはり気になります。

 

続きを読む

【絵本/感想】ヨシタケシンスケ「ヨチヨチ父-とまどう日々」-このホンネ満載はお母さんたちから総スカンくらいそう

 いやいやいや、いやいやいやいや、これはスゴいぞ。今をときめく絵本作家ヨシタケシンスケの子育てイラストエッセイ!僕は子供はいないし、子育ての経験もない。だけどこれを読むと、そのタイヘンさをヒシヒシと感じ、同時に子育てでの父親の立場のビミョーさに気がつくのだ。

 

 ヨシタケさんがすごいのは、子育てにおける「男のホンネ」をひょうひょうとしたあの語り口でズバリ語っちゃってるところ。ちょっと本文を引用してみますね。

 

続きを読む

【書評】原田マハ「アノニム」-ジャクソン・ポロック幻の傑作がオークションに。落札からの展開にドキドキ!

 「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」に連なる原田マハのアート・エンタテインメント。今回はモダンアートの天才ジャクソン・ポロックの絵がテーマだ。香港で幻の傑作「ナンバー・ゼロ」がオークションに掛けられることになった、というのが発端。今までその存在さえ知られていなかった作品の出現に色めき立ち集結してくるアートコレクターたち。その中になぜか世界的な建築家ミリこと真矢美里もいる。彼女とその仲間たちはどうやら何かを企んでいるらしい。一体何を?

 

 そしてもう一方の主人公、香港の高校生17歳の張英才(チョン・インチョイ)。デイスクレシア(難読症)だが、絵が大好きな若者だ。彼はネットを通して「アノニム」という謎のアート窃盗団の存在を知り強い共感を覚えるのだが…。

 

続きを読む

【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2017.8/1週)

 さて、出た本。というか文庫化が2つ。沢木耕太郎「波の音が消えるまで」第1部:風浪編、第2部「雷鳴編」、第3部「銀河編」3冊まとめて出ました。マカオでバカラの深みにハマった若者たちの物語。沢木耕太郎の書いたものはノンフィクションでも小説でもいつも気になる。

 

 もう一冊の文庫化は、米澤穂信「満願」。山本周五郎賞を受賞し、史上初めてミステリー三冠にも輝いた短編集。今日、本屋さんに行ったら新刊のメインのコーナーにドドドドッと平積みになっていました。これはやっぱり読まなくちゃねぇ、とミステリー読みではない僕も思うのでした。

 

 ◯これまでの「出る本、出た本」はこちらでまとめて。

 

 2017.7.31 7月も終わりですね。東京地方、今日は晴れてますが明日からは雨や曇りばかりで気温も低め。どうなってるの?読書は村田沙耶香「殺人出産」。

 

【書評ランキングに参加中】

ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

 

【本の雑誌】2017年上半期ベストテンを紹介!

 「本の雑誌」8月号で発表された上半期のベストテンです。ネットには掲載されないベストテンなので、いつもちょっと時間が経ってから紹介しています。そろそろ月も変わるので営業妨害にはならないかな?

 

1位 周防柳「蘇我の娘の古事記」

2位 遠田潤子「冬雷」

3位 足立紳「14の夜」

4位 斎藤美奈子「文庫解説ワンダーランド」

5位 辻村深月「かがみの孤城」

6位 増田俊也「北海タイムス物語」

7位 青山文平「遠縁の女」

8位 柞刈湯葉「横浜駅SF」

9位 カリン・スローター「ハンティング」

10位 江國香織「なかなか暮れない夏の夕暮れ」

続きを読む

【賞いろいろ】講談社エッセイ賞に小泉今日子「黄色いマンション 黒い猫」と穂村弘「鳥肌が」

 紹介がちょっと遅くなりましたが第33回講談社エッセイ賞に小泉今日子さんの「黄色いマンション 黒い猫」、そして、穂村弘さんの「鳥肌が」が選ばれました。パチパチパチ。キョンキョンのエッセイは読んでいて、感想を載せています。こちら。

続きを読む