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【書評】ジュンパ・ラヒリ「見知らぬ場所」-異国に生きる人々を通して描かれる普遍の愛!

 「停電の夜に」「その名にちなんで」で世界にファンを作ったインド人の女流作家ジュンパ・ラヒリ。彼女の作品はどれもインドからアメリカに渡った人々が主人公だ。この短編集「見知らぬ場所」では、父と娘、母と叔父、姉と弟などファミリーの間の出来事がいつもと同じ静かな筆致で描かれている。発端に「死」が用意されていることもあるけれど、実際に描かれているのはそれ以降の話。普通の人々の普通の人生の普通の日常の話だ。ラヒリはいつも同様、細部をしっかりと描き、微妙な心の揺れをとらえ、その結果として異国に生きる人々の「愛」の物語を紡ぎ出している。それは、大甘ではないちょっとビターな愛、しかも、人種や国を超越した普遍の愛だ。

 

 2部構成で、第1部は5つの短篇、第2部は連作3部作である「ヘーマとカウシク」。幼い頃に出会った2人が、一度離れ、再会する物語。30年の間の出来事を3つの短篇で描いているのだけど、まさに30年を実感するようなストーリーに仕上がっているのが素晴らしい。重いがどこか救いがあるラストも心に残る。ジュンパ・ラヒリ、もし未体験ならば、ぜひとも読んで欲しい作家だ。

 

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