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【書評】伊坂幸太郎「オー!ファーザー」-母一人子一人&父四人!?大団円へ!計算されつくされた父親たちのキャラ

 この小説、「父親が4人」というのがまずおかしい。主人公由紀夫の母和代に惚れた4人の男がなぜかひとつ屋根の下に住んでいる。母一人子一人&父四人というなんだかわからん家族だ。父親4人のキャラが計算されつくされている。ギャンブル狂の鷹、格闘好きの中学教師勲、無類の女好き葵、そして、博覧強記の大学教授悟。ははは、だ。

 

 さて、物語。ミステリーのわりにはなかなか事件が動かない。冒頭から4分の1ぐらいで何かが始まるがそれも、不穏な動き、という程度で何が起こっているのかは見えてこない。少しイライラしないわけではないが、それでも十分におもしろいのは伊坂の優れた文章力、特に会話のうまさがあればこそだ。由紀夫、4人の父、由紀夫の級友多恵子、街の顔役富田林などなど、人がよく動き、よくしゃべる。そして街は赤羽氏と白石氏による「紅白県知事選」の真っ最中。う~む、これもなんだか怪しい気配…。登校拒否の級友や出張で早々に姿を消した母和代も気にかかる。

 

 残り4分の1から大きく事件が動き大団円へと突入するのだが、ここでのハチャメチャぶりは父親たちのキャラに負うところが大きい。そりゃそうでしょ、そのためにこのとんでもない父親たちがいるのだから!ミステリーとしては少々物足りなさも感じるのだが、物語としては上出来。先を急いで読みたくなる極上のエンタテイメント小説だ。

 

◎「オー!ファーザー」は2013年6月、新潮文庫で文庫化されました。

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