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【ノンフィクション/書評】山根一眞「はやぶさの大冒険」-はやぶさと共に大冒険している気分、帰還の場面で泣きそうに

 山根一眞さんのこの本は、はやぶさのあの感動的な帰還からそれほど間を置かずに発売された。それもそのはず、山根さんは7年前の打ち上げの時からすでに取材をスタートさせ、ずっとフォローしていたのだ。ほとんどの日本人がそれほど興味を持っていなかった打ち上げにもちゃんと立ち会っている。はやぶさ人気で関連の本も出ているが後追いじゃない取材はさすが山根さん、これははやぶさを7年間真摯に追い続けた詳細な記録だ。

 

 はやぶさについては僕自身、帰還が近づいてからいろいろ知ったくちで、まったくのにわかファンである。知らないことも多い。実はこの本でも最初から激しく驚かされる。長さ535mしかないイトカワの公転速度は秒速30キロ、ハンマー投げのハンマーを投げ出す直前の速度が秒速30mなので、その1000倍の速さで動いてるイトカワにはやぶさを着地させなくてはならない。そのためにはやぶさは、2年間かけてイトカワと同じ速度になるよう(そうすれば止まっているのと同じだから)加速し続け(!!!)飛んでいたのだ。

 

  う~む、そうだったのか。「はやぶさがイトカワをピタリとらえるのは、東京から2万キロ離れたブラジルのサンパウロの空を飛んでいる体長5ミリの虫に、弾丸を命中させるようなもの」というのだから本当にスゴい。

 

 こんな話で度肝を抜かれ、さらに、何度ものトラブル、行方不明の日々など知ってることや知らないことをいろいろと読んでいるうちに、あ~はやぶさ、本当に良く戻って来たなぁ、と改めて感嘆してしまった。山根さんは、トラブルなどその折々にスタッフにインタビューをしているので、その時の状況や問題点がわかりやすく、いつの間にかはやぶさと一緒に大冒険をしてる気分になってしまう。

 

 そして、最後の地球帰還、作者自身、豪州まで足を運んで書いているのでこれは本当に感動的。またまた涙が出そうになった。それにしても、大冒険を支えた日本の技術者たちの技術力、応用力、危機管理能力、大胆な決断は本当に素晴らしい。これを読めばそのことがはっきりとわかる。最後にひと言付け加えれば、もし、カプセル内の微粒子がイトカワのものでなくても、イオンエンジンの長期に渡る運用などこのプロジェクトは世界中から大きな大きな称賛を受けている。本当に世界に誇る大冒険だったのだ。

 

2010.9.2 あ~僕にしては珍しく長々と書いちゃった。いやぁ、これは本当にいいですよ。はやぶさ2も決まったみたいで、よかったよかった。

 

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