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【書評】絲山秋子「妻の超然」-三話三様の超然がたまらなくおもしろい

 いやいやいや、絲山秋子は大好きな作家だが、この新作はまたまたおもしろい。まずは「超然」ありき。それをキーワードにして作られた3つの短編、「妻の超然」「下戸の超然」そして「作家の超然」。同じ超然でもその超然は三話三様と言っていい。

 

 まずは「妻超(すまん)」、50にも手が届きそうな妻、夫は浮気をしている。この物語、登場人物やら何やらがいちいちおかしい。そして、いろいろいろいろあった後で妻は「超然」にたどり着く。でも、この超然は情けない超然。とほほの超然であったのだ。「下戸超(すまん)」は30過ぎの男が主人公。恋人が出来るが彼女はけっこうな酒飲み。これもラスト近くで「超然」にたどり着くのだが、これは無意識の超然だ。というか、男と女の意識のズレから生まれた超然。それにしても酒飲みのはずの絲山さん、下戸のことも男のこともホントよくわかってる。ま、それが作家か。3作の中では平凡な恋物語っぽいこれが一番おもしろい。

 

 そして、問題作である「作家の超然」。「おまえ」と呼ばれる主人公は作家だ。絲山さん自身と言っても、まぁいい。そして、この作家はすべてに超然としていたい、でもそれはできない。この小説はいつの間にか経済学だとかマスコミだとかの話になり、最後は「文学は長い移動を終えて、ついに星のように消滅するだろう」などという言葉にまでたどりつく。何だかわかんないが、何だかスゴい。超然としてはいられない3つの物語なのである。

 

○絲山秋子「妻の超然」は2013年2月新潮文庫で文庫化されました

 2010.11.15 あやややや、白鵬なすすべもなく負けちゃいましたね。今場所はこれからどんどん盛り上がると思ってたのに。相撲協会にとってもこの負けは痛すぎるよなぁ。それにしても九州、入りが悪い。

 

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