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【書評】ジュンパ・ラヒリ「その名にちなんで」-一家の過去、現在、未来がすべて見えてくるような語りの優しさ

 「停電の夜に」という短編集で新人ながらピュリツァー賞を取ったインド系の女性作家ジュンパ・ラヒリ。このブログでは「見知らぬ場所」という短篇集を紹介している。この「その名にちなんで」はラヒリの初めての長編でこれもすごく良かった。

 

 ひと言でいえば、この小説はインドからアメリカに渡ってきた移民家族の物語である。タイトルの「その名」というのは一家の長男、主人公であるゴーゴリの名前のことだ。列車事故に巻き込まれた父の命を奇跡的に救った「本」の著者が、あのロシアの作家ゴーゴリで、なんだかんだあって、それが彼の名前になるのだ。最初はアメリカに渡った両親の話、そして、ゴーゴリのストーリーへと物語はバトンタッチされていく。ある意味これは、普通の移民の普通の人生のストーリーだ。まぁいろいろとエピソードはあるけれど、劇的なことは何も起こらない。ゴーゴリは恋をし、結婚をし、父との別れも経験し、そして、最後は…。

 

 ラヒリが優れているのはどんなことでも描写がこまやかであること。それは普通ならば「リアリティ」という話になるのだけど、この小説の場合、細部を描くことで、俯瞰してみれば全体が美しい人生の模様になっているという感じがする。ラストのゴーゴリの述懐がなんともいえず素晴らしい。一家の過去、現在、未来がすべてそこで見えてくるようなその語りの優しさ。う~ん、とてもとてもいいです。

 

 

2011.2.27 あ、すみません。妻の裂き織り、新作が出来ました。こちらで公開しています。ぜひ一度見てみてください。お徒歩ショルダー、ぽちバッグ、織り花(ブローチ)などなど、どうぞよろしく。

 

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