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【絵本】ショーン・タン「アライバル」-読むほどに謎が深まる大傑作!

 おおっ、これはスゴいぞ。「本の雑誌」の上半期ベスト10に入っていて興味をひかれた一冊。ちょっと大判の「グラフィック・ノベル」(と言うらしい)だ。絵本というよりこういう言い方の方がよく似合う。ショーン・タンの精緻なイラストがなんともいいし、そこで語られる物語に心ひかれる。言葉は一切ない。絵だけで語られるストーリーだ。しかし、読み進めていくうちにたくさんの音と言葉が聞こえて来る。頭の中で、どんどんどんどん登場人物が動き始める。それは、映画を見ている感覚に近い。ううむ、ショーン・タン、驚きの作家だ。

 

 物語は「夫婦とその娘の写真」を梱包するところから始まる。見開きの左側に9コマで額に入った小さな写真を包んでいる様子が描かれている。それはトランクに仕舞われ、右ページには大きな絵が一枚。トランクの上で手を重ねる夫婦の姿がある。2人の表情は暗く、その旅立ちが不安を伴うものだということがわかる。どうやら、この旅は夫一人だけのものらしい。涙の別れがあり、汽車は出て行く。男は船に乗り、どこか見知らぬ国に行くようだ。

 

 その異国の地の様子とそこでの暮らし、人々との交流が「アライバル」の一番の見どころだろう。移民から見たその初めての土地の様子をショーン・タンはリアルにではなくファンタジックに描いていく。そこでは見知らぬ文字が踊り、異形のものたちがいて、街は恐怖に満ち満ちている。ただ「人」だけが優しい。謎のような物語は、多くの謎を残したまま終わる。だから僕らは、何度も何度もこの「アライバル」をひも解く。読むほどに謎は深まり、飽きることはない。素晴らしい一冊!!この物語に4年の歳月を費やしたというショーン・タンに大喝采!!

 

2011.11.23 bk1「今週のオススメ書評」に「水域」が選ばれました。やや渋いコミックですがこれはなかなかいいですよ。bk1のページはちら(木曜日まで)。読書はまだ佐藤正午「事の次第」。

 

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