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【書評】綿矢りさ「ひらいて」-この過激な疾走はいったいどこに向かうのか?

 これは間違いなくあの「蹴りたい背中」を書いた綿矢りさの小説である。2つは確かにつながっている。一方でこれは本当にあの「蹴りたい背中」の作者が書いた小説なのか?とも思う。なぜなら表現力、言葉の力強さが芥川賞受賞のあの小説とは格段の差があるからだ。それにしても「ひらいて」はすごい。そのすごさに圧倒された。

 

 この物語の主人公は木村愛という受験を控えた女子高生だ。活発でおしゃれで級友たちの人気も高い彼女が、クラスの中であまり目立たない「たとえ」という男の子を好きになる。それも強く激しく。驚くことに彼女は深夜の教室に忍び込み、彼の机の中からラブレターを見つけ盗み読みまでしてしまうのだ。手紙の相手は病弱な元同級生の美雪。愛は2人の関係にショックを受けながらも、今度は美雪へと接近していく。これもまた、強く激しく。

 

 これ以上、ストーリーは紹介しないが、美雪の存在を知ってからの愛の変貌は恐ろしい。以前の彼女はまったく姿を消し、ただただたとえと美雪へと突き進んでいく。それは恐ろしくもあるのだが、そんな愛の行動をすんなりと受け入れ、しかも共感までしている自分がいて驚いた。いいのか?この女を野放しにして???

 

 終盤、愛のこの過激な疾走がいったいどこに向かい、どこにたどり着くのか、それさえわからなくなってくる。純愛カップル(に見える)たとえと美雪、そして、彼らに激しく介入する愛。もつれにもつれ混沌の中にいるこの3人の間にあるのは、もう愛でも恋でも憎しみでも嫉妬でもない何か。すべてを超越した本能そのものだ。ひらくことでしか得ることができないひとつの思いだ。おののきながらも強く共感してしまう魂の物語。綿矢の驚くべき表現力がこの物語を支えている。

 

◎「ひらいて」は2015年1月、新潮文庫で文庫化されました。

2012.9.19 総裁選とか代表選とか、はぁ、つまらん。宮部みゆき「ソロモンの偽証」第一部を読んでるうちに第二部が出ちゃう!まずいぞ。

 

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